国土交通省と建設業4団体は3月30日に開いた意見交換会で、2021年度に建設技能者の賃金上昇率を「おおむね2%以上」を目指すことで合意した。新型コロナウイルス感染症の拡大で先行きへの不透明感が高まり、公共工事設計労務単価の伸びが鈍化する中でも、行政・発注者・元請け・下請けが一体で賃金上昇の好循環を維持する。製造業や全産業平均の賃金水準に追い付き、他産業との人材獲得競争に打ち勝てる建設産業を官民一体で目指す。
赤羽一嘉国交相をはじめとする同省幹部と、日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)、全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)、全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)、建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二郎会長)の4団体の幹部が集まり、建設技能者の賃金引き上げに一致して取り組むことで合意した。
今年3月に改訂された労務単価は、前年度を下回った単価が全単価の42%に上ったため、前年度の金額に据え置く特別措置を適用した。特別措置適用後の単価は、全国全職種平均で1・2%上昇したが、単価の上昇が始まった13年度以降では最低の伸び率となった。
意見交換会の中では、この状態が続けば、賃金下落、労務単価の低下、利益の低下、さらなる賃金の低下という負のスパイラル(連鎖)≠ノ陥りかねないとの危機感を共有し、今後の担い手確保のためにも賃金上昇の継続が必要との認識で一致。25年度に建設技能者が製造業の賃金水準に追い付くためには、年平均2・2%の上昇が必要だとして、21年度は「おおむね2%以上」の賃金上昇率を目指し、賃上げに取り組むことで合意した。
この目標を達成するため、「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための5か年加速化対策」で持続的・安定的に公共事業量を確保するとともに、ダンピング対策の強化や技能者への適切な賃金支払いに官民で取り組む。
国交省は「中央公契連モデル」を大きく下回る低入札価格調査基準価格を設定している市町村に見直しを働き掛ける他、調査基準価格を下回った場合の施工確保措置(前払金の縮減、契約保証額の引き上げ、技術者の増員など)を拡充する。
さらに、建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用し、技能者の技能・経験に応じた賃金が支払われるようにする。直轄工事では、21年度から「CCUS義務化モデル工事」を原則全てのWTO工事(一般土木)で実施するとしている。
提供:建通新聞社