国土交通省の「東日本大震災による津波被害からの市街地復興事業検証委員会」は3月4日に開いた会合で、市街地復興のノウハウや教訓を次の災害に生かすための提言を大筋でまとめた。提言では、10年間の市街地復興事業の成果を評価しつつ、一部に未利用地が生じたことを課題として指摘。今後の大規模災害の発生時には、人口減少の傾向や生活再建のプロセスに応じた被災者の意向の変化を把握することを求めている。
東日本大震災の津波被害を受けた被災地では、防災集団移転促進事業、土地区画整理事業、津波復興拠点整備事業によって、約1万8000戸の宅地を整備し、被災者の集団移転を支援した。
事業はこの10年でほぼ完了したものの、集団移転を進める際、時間ととも変化する被災者への意向に対応する必要があり、計画人口が約15%縮小するなど、地区によっては未利用地の問題も顕在化したという。
提言では、将来的な人口減少を見据えて事業規模を検討する必要があったこと、被災者の意向把握を生活再建の適切なタイミングで行うことなどを教訓として提示。その上で、被災者の意向が変化することを前提に工区の分割や複数事業の組み合わせなど、柔軟な対応を講じるべきだとした。
さらに、大災害が起こる前に被災後の復興まちづくりを考え、持続可能な将来のまちづくりを検討する必要があるとも指摘している。
提供:建通新聞社