赤羽一嘉国土交通相は、建設専門紙の共同インタビューに応じ、気候変動による自然災害の激甚化・頻発化に対応するため「防災・減災が主流となる社会の実現に全力を傾ける」などと、新しい年2021年の抱負を語った。新型コロナウイルス感染症の拡大に収束の兆しが見られない中、感染リスクを低減し、建設業の働き方を転換する「インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる」とも強調した。
◇5か年加速化対策が閣議決定
―21年度以降の防災・減災、国土強靱(きょうじん)化を推進する、事業規模15兆円の新しい枠組みが決まりました。
「昨年12月、『防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策』が閣議決定された。一昨年の大臣就任直後から、台風・地震などの被災地に30回以上足を運び、各地域の首長から、21年度以降も中長期的視点に立って計画的に実施できる必要・十分な予算の継続を強く求められてきた。私自身も、国民の安全・安心を一層確保するための対策を最大限講じることが不可欠だと考えてきた。加速化対策を実行に移し、防災・減災が主流となる安全・安心な社会の実現に全力を傾ける」
―防災・減災、国土強靱化の担い手となるのは建設業です。
「建設業は社会資本整備の担い手であると同時に、地域の経済や雇用を支え、災害時には最前線で地域社会の安全・安心の確保を担うなど『地域の守り手』として、国民生活や社会経済を支える役割を担っている。一方で、建設業では他産業を上回る高齢化が進み、近い将来、高齢者の大量離職による担い手の減少が見込まれる。将来の建設業を支える若年入職者の確保が喫緊の課題だ」
「19年6月に成立した新・担い手3法に基づき、工期の適正化や施工時期の平準化の推進、技術者制度の規制の合理化などの取り組みを進めており、建設業の働き方改革と生産性向上を図っている」
「工期の適正化については、昨年7月に受注者・発注者も参画する中央建設業審議会で『工期に関する基準』を作成・勧告した。労働環境の改善につながる工期の適正化が進むよう、建設業界にも協力をお願いしたい」
◇CCUS 自治体工事にも活用
―国交省として、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及をどのように進めますか。
「CCUSは、技能者の技能と経験に応じた適正な賃金の支払いにつなげるために必要不可欠だ。昨年11月に開いた建設業4団体との意見交換会では、CCUSを活用した建設業退職金共済(建退共)の電子的な積み立ての本格実施に加え、直轄工事などでのCCUS活用工事の対象拡大、公共事業労務費調査におけるCCUS登録者の賃金実態の調査・分析、市町村を含む地方自治体発注工事でのCCUS活用の働き掛けなど、業界と官民一体で普及促進に向けて取り組む決意を新たにした。建設産業が新3K(給与、休暇、希望)の魅力的な産業となるよう、取り組みをさらに加速させる」
◇映像・音声で施工状況を確認
―新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、建設現場のデジタル化を急ぐ必要があります。
「建設現場の生産性向上や働き方改革、リモートを中心にした新型コロナウイルス感染症対策を実現する上で、i−Constructionの重要性がますます高まっている。加えて、社会のデジタル化の進展、働き方の変化に対応するため、建設現場や公共サービスなど、インフラ分野全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する必要もある」
「今年は、これまで現場で行っていた施工状況や材料の確認に映像・音声データを活用して遠隔で行ったり、5G技術を活用した無人化施工技術の現場実証など、具体的な取り組みを公表する。公共事業の円滑な施工、建設現場の感染リスクの低減、建設業の新しい働き方への転換に向け、インフラ分野のDXを加速させる」
提供:建通新聞社