2021年度から5年間の事業規模をおおむね15兆円とする『防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための5か年加速化対策』の原案がまとまった。激甚化する風水害や切迫する大規模地震への対策に12・3兆円、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に2・7兆円、デジタル化の推進に0・2兆円を投じ、合計123の対策を集中的に実施するとしている。各対策の中長期の達成年度を5年間の加速化対策によって前倒しにする。
政府は12月9日、自民党の国土強靱化推進本部(本部長・二階俊博幹事長)に原案を示し、大筋で了承された。あす11日にも閣議決定する見通し。
政府は、気候変動の影響を受けた自然災害の激甚化を受け、20年度で終了する3か年緊急対策による備えが十分でないとし、21〜25年度に実施する加速化対策をまとめ、集中的に対策を講じる。
原案では、▽激甚化する風水害や切迫する大規模地震への対策(78対策)▽予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策(21対策)▽国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進(24対策)―の合計123対策に重点的に取り組むとしている。
自然災害から人命・財産の被害を防止・最小化するため、流域治水対策を推進するとし、河川・下水道・砂防・海岸・農業水利施設の整備に関係者が連携して取り組み、流域全体で治水安全度を向上させる。国有地を活用して遊水池・貯留施設の整備も加速させる。
高速道路のミッシングリンク解消や4車線化、高速道路・直轄国道とのダブルネットワーク化、緊急輸送道路の無電柱化対策なども講じる。浄水場や上水道などライフラインの耐震化も進める。
老朽化したインフラの修繕を加速し、予防保全型への転換を実現させる。河川管理施設・道路・港湾・鉄道・空港の他、公営住宅や公立小中学校の老朽化対策も重点的に推進する。
デジタル化の取り組みでは、インフラ分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、防災・減災に役立つデジタル技術の開発を後押し。無人化施工技術の安全性・生産性向上対策に加え、国・都道府県・市町村における建設キャリアアップシステム(CCUS)活用工事の導入なども重点的に進める。
加速化対策の事業規模は「おおむね15兆円」を目指し、国・地方の財政支出や財政投融資の他、民間資金(電力会社など)も充てる。
初年度分の対策は、12月中に閣議決定する20年度第3次補正予算案に盛り込む。3次補正の公共事業費の規模は2・5兆円を見込んでおり、このうち1・7兆円を初年度の対策分に充てる。債務負担行為を積極的に活用した施工時期の平準化、地域の実情を踏まえた適切な規模での発注により、円滑に公共事業を執行する。
提供:建通新聞社