地方自治体が管理する橋梁の修繕が遅れている。2014〜18年度の定期点検で、判定区分V(早期措置段階)、判定区分W(緊急措置段階)と診断された6万2873橋の中で、19年度末までの5年を経ても修繕に未着手の橋梁は4万1497橋と66%に上っている。点検結果に修繕が追い付かない一方で、修繕の緊急性が低い判定区分T・Uだった橋梁のうち、5年後にV・Wと診断される橋梁も毎年6000橋のペースで発生する。健全性が高い時期からメンテナンスに着手する予防保全型への転換が急務だ。
国土交通省の調べによると、一巡目の点検(14〜18年度)で判定区分V・Wと診断された自治体管理の橋梁6万2873橋のうち、19年度末までに、修繕に向けた設計・工事に着手した橋梁は34%となり、国交省管理の69%、高速道路会社の47%と比べて遅れている。
14年度に法定化された5年に1度の定期点検では、判定区分V・Wの橋梁は次回点検(5年以内)までに修繕などの措置を講じるべきとされている。初年度の14年度の点検で判定区分V・Wと診断された橋梁に限って見ると、修繕着手率は国交省96%、高速道路会社100%に対し、自治体は52%と大きな差がある。
19年度にスタートした2巡目の定期点検では、新たな課題も明らかになっている。1巡目の14年度の点検で判定区分T・Uと診断された橋梁の5%が、2巡目の19年度の点検で判定区分V・Wに移行していた。
これまで自治体は、判定区分V・Wの橋梁を毎年約7000橋のペースで修繕しているが、V・Wへの毎年の移行分となる6000橋の対応も必要になるという。このため、1巡目で判定区分V・Wだった約4万2000橋の修繕は年間1000橋しか進まず、老朽化の解消までには単純に42年掛かる計算になる。
「国土強靱化で老朽化対策を加速」
自治体が橋梁の安全性を確保するために必要な予算が不足しているのは明らかで、政府は、近く閣議決定する『防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための5か年加速化対策(仮称)』により、自治体の老朽化対策を後押しする考えだ。
18〜20年度に総事業費7兆円を上乗せした3か年緊急対策にインフラの老朽化対策は盛り込まれておらず、5年で事業費15兆円が見込まれる加速化対策の中で、自治体の橋梁の修繕なども財政的に支援する。国交省は判定区分V・Wの橋梁の修繕を優先しつつ、V・Wに移行する可能性がある判定区分Uの橋梁の修繕にも着手し、予防保全型のメンテナンスサイクル確立を急ぐ考えだ。
提供:建通新聞社