国土交通省は、老朽化が進んでいる排水機場の大量更新に備え、「機能向上型」の更新に向けた検討に入る。排水機場のポンプの動力源には、一品ごとに設計・生産する船舶用エンジンを使用しているが、更新に合わせ、大量生産が可能な車両用エンジンに転換することで、コストの縮減とメンテナンス性の向上を両立させる。こうした更新を可能とするよう、現在の技術基準を仕様規定から性能規定に見直す。
国交省は、10月19日に社会資本整備審議会・交通政策審議会の社会資本メンテナンス戦略小委員会を開き、河川機械設備分野の更新にこうした考え方を取り入れる方針を示した。
排水機場のポンプ施設は、設置後40年が経過したものが現時点で2〜3割だが、10年後には4〜5割まで増加する。一方、気候変動で激甚化した自然災害により、この40年で内水被害の発生頻度は1・4倍に増加している他、排水機場自体が水没し、機能損失を招く事態も増えている。
ポンプ施設をはじめとする設備分野では、老朽化が進むと修繕での対応に限度があり、これら老朽化した施設の大量更新を「単純更新」ではなく、「機能向上型更新」に転換。老朽化と気候変動に対応できるようにする。
具体的には、一品ごとに生産し、ポンプ用に改造している船舶用エンジンを更新する際、大量生産されている車両用エンジン(無改造)を採用。車両用エンジンで稼働できる排水容量の小さいポンプをこれまでよりも多く設置し、災害時に機能する余剰の排水能力も確保できるようにする。
建屋の構造は2階建てから平屋、配管は金属管(鋳鉄管、ステンレス管)から新素材のポリエチレン管に見直し、現在2億〜4億円必要な更新コストを最大10分の1まで削減することを目指す。
船舶用エンジンの故障時に必要だった専門技術者は自動車整備技術者で代替でき、代替機との交換も容易になるため、メンテナンス性や代替性の向上にもつながるという。
小委員会は19日の会合で、排水機場の更新を含む今後取り組むべき項目と当面の検討項目を決定。インフラの維持管理への包括的民間委託の導入、インフラメンテナンスへの新技術導入、技術者派遣制度の活用などについて、継続的に小委員会で議論することで一致した。
提供:建通新聞社