全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)が、全建の建設キャリアアップシステム(CCUS)のモデル工事現場33現場にアンケート調査したところ、下請企業の事業者登録がゼロの現場が40%を占めるなど、事業者登録と技能者登録が進んでいない実態が明らかになった。技能者登録が進まない理由では、「書類申請に経費と手間がかかる」「登録したメリットがない」という回答が多かった。
全建のCCUSモデル工事現場は、CCUSの普及と課題の検証に向け、都道府県建設業協会を通じて3月に選定。現在、国の直轄工事23現場、地方公共団体の工事8現場、民間工事2現場の計33現場が対象になっている。アンケートでは8月末時点の状況を聞いた。
各現場の下請企業の数は、5社以上10社未満が34%と最も多く、10社以上30社未満が30%で次いだ。これに対して、事業者登録を行っている下請企業の数では、ゼロの現場が40%を占め、1社以上5社未満が33%で次いだ。国土交通省がCCUS義務化モデル工事で最低基準としている事業者登録率70%をクリアしている現場の割合は24%にとどまった。
また、各現場の技能者の人数は、25人未満が54%だった。これに対して登録技能者が25人未満の現場が77%を占めた。国交省がモデルで最低基準とする技能者登録率60%をクリアする現場は34%だった。
一方、登録技能者がカードリーダーにタッチして行う就労履歴の蓄積は、ほとんどの登録技能者が行っていた。国交省がモデルで最低基準とする就労履歴蓄積率30%を73%の現場がクリアしていた。
社会保険加入や資格者情報の確認、施工体制台帳や作業員名簿の作成でのCCUSの活用は、1現場しか行っていなかった。
利用しない理由については▽CCUSに登録していない下請企業・技能者がいるため▽施工体制台帳などの提出を発注者指定の様式で求められることがあるため―といった指摘があった。施工体制台帳などについては、「CCUSで出力した様式も認めてほしい」「全現場の安全書類形式(グリーンサイトなど)を統一してCCUSと連動させ、紙の書類や資格証の提出をなくせば、下請企業の大幅な事務作業の削減につながる」といった意見が出た。
また、企業や技能者の情報を元請けなどで閲覧できることによる問題の発生はゼロだった。
下請企業に対するCCUSへの加入対策は、62%の現場が行っていた。有効な対策に関する意見では▽説明会の実施▽代行申請の実施▽モデル現場の見学会の実施―が多かった。
CCUSを実際に活用したモデル工事現場のメリットについては、「メリットがある」とした現場は26%で、「メリットがない」が74%を占めた。
具体的なメリットとしては「グレードに応じた処遇や評価などで技能者のモチベーションアップにつながる」「社員の勤務状況を把握できる」「技能者の活動実績が分かり、新規の下請けの選定に役立つ」「今後のICT化に伴い、データの共有やペーパーレス化に必須」といった声が寄せられた。
CCUSの普及促進策では▽公共工事の積算への経費(技能者の賃金アップ費、カードリーダー設置費、カードタッチ費など)の計上▽工事成績評定や総合評価、経営事項審査での加点▽国交省のモデル工事の拡大▽申請の簡略化▽登録料・設備費などの削減―などの意見があった。
提供:建通新聞社