土木学会(家田仁会長)は9月28日、2020年度の「土木学会選奨土木遺産」を発表した。選考委員会(天野光一委員長)は、第2次世界大戦後の電力供給を支えた水力発電の象徴的な産業遺産であり、いまも安定的に電力を供給し続けている黒部ダム(富山県)、建設省(当時)が狩野川流域の水害防止を目的として建設した狩野川放水路(静岡県)など26の土木施設を選んだ。
選定理由を説明した天野委員長は「完成した時点で技術的な評価を与える土木学会技術賞や田中賞(作品部門)が一つの指標であることは確かだ。だが、半世紀以上の長い時間を経て、高い事後評価を得た土木の名品を心からたたえる行為こそ、技術者の琴線に触れるものではないか」と指摘。
「土木技術者には、自らの職業が、将来、重要文化財になるかもしれないものを創造しているということ、人口に膾炙(かいしゃ)するような、社会に役立つもの生み出しているのだ、というプライドを持ってほしい」と話した。
20年度の選奨土木遺産に選出された構造物(学会の支部別)は次の通り。
西暦は竣工年または改修年。
【北海道】
▽金山ダム(北海道南富良野町)1967年▽神居大橋(同旭川市)1938年、58年、72年、81年などに改修
【東北】
▽馬淵放水路(青森県八戸市)1950年
【関東】
▽寺坂橋(埼玉県本庄市)1889年
▽鷺石橋(群馬県沼田市)1929年
▽表参道ケヤキ並木道(東京都渋谷区)1921年
▽日光いろは坂第1・第2(栃木県日光市)第1:1954年、第2:1965年
▽佐伯橋(山梨県都留市)1927年
▽栃ケ原地すべり第1号集水井(新潟県柏崎市)1955年
▽横浜港新港埠頭関東大震災復興岸壁群(横浜市)1925年
▽秦野・曽屋水道施設群(神奈川県秦野市)1888年ほか
▽常盤橋(東京都千代田区〜中央区)1926年
【中部】
▽黒部ダム(富山県中新川郡、黒部市、長野県大町市)1963年
▽狩野川放水路(静岡県伊豆の国市、沼津市)1965年
▽中川運河(名古屋市)1932年
▽五六閘門(岐阜県瑞穂市)1907年
【関西】
▽ビル・高架道路・地下鉄駅の一体整備(大阪市)1970年
▽大阪狭山市域の南海電鉄煉瓦造暗渠群(大阪府狭山市)1898年
▽阪急電鉄神戸市内線高架橋(同市)1936年
▽姫路市営モノレール遺構群(同市)1966年
▽豊岡市水道の創設期施設(同市)1920年、1922年
▽笹生川ダム(福井県大野市)1957年
【中国】
▽出合橋(広島県安芸市)1935年
【四国】
▽三架橋(香川県観音寺市)1935年
【西部】
▽八代の石造干拓施設群(熊本県八代市)1816〜1938年
▽宮内原用水の二穴式隧道群(鹿児島県霧島市)1716年
提供:建通新聞社