人口減少や財政悪化でインフラの維持管理・更新が困難になっても「サービス水準の低下」「利用料金の引き上げ・増税」「(インフラの)廃止・縮小」を望まない国民が多数を占めたことが、国土交通省が行った意識調査で分かった。同じ調査では、インフラの老朽化によって「災害に対する危険性が高まる」と感じている国民が全体の7割に上った。調査結果を「2020年版国土交通白書」に掲載した。
建設後50年以上となる施設の割合は、2033年3月に道路橋で63%、トンネルで42%、河川管理施設(水門など)で62%、港湾岸壁で58%となる見通し。ただ、5年に1度の定期点検が義務付けられた道路橋でみると、対策が必要と診断された道路橋の修繕着手率は、地方自治体の管理橋で20%ににとどまっている。
人口減少によって利用者が少なくなった橋梁を廃止・撤去する事例も出始めているものの、国民はそうしたインフラの整備水準の低下を望んでいない結果が、意識調査の中で明らかになった。
インフラの維持管理・更新が困難になった時に実施すべき対策を尋ねると、「廃止・縮小」に否定的な回答(実施すべきではない、どちらかというと実施すべきではない)が合計43・7%となり、肯定的な回答(実施すべき、どちらかというと実施すべき)の32・9%を上回った。
「サービス水準の引き下げ」では否定的な回答が60・6%、「利用料金の引き上げ・増税」が57・2%となるなど、経済的負担の増加や利便性の低下を避けたいマインドがある。
別の設問では、インフラの老朽化で「災害危険度」が高まることを懸念する回答が全体の69・7%に上っており、災害の激甚化・頻発化による不安も高まっている。
こうした国民意識も踏まえ、白書では、予防保全型管理への転換、新技術の活用、自治体連携への支援などの具体策を挙げ、将来的にもインフラを適切に維持管理できる手法・体制を確立するなどとしている。
提供:建通新聞社