建設キャリアアップシステム(CCUS)の原形となった英国のシステムについて、建設産業専門団体連合会(建専連)の派遣した欧州視察団が、報告書にリポートをまとめた。システムは「コンストラクション・スキルズ・サーティフィケーション・スキーム(CSCS)」と呼ばれるもので、英国の建設就業者の8割に当たる約193万人が登録しているという。報告書では、このシステムが英国の建設産業にどのように定着したか、などをまとめている。
CSCSは、英国の建設技能認証制度で、国家資格を持ち、安全衛生試験に合格したことを条件に、技能者がICカードを取得する。このICカードをカードリーダーで読み取り、入退場管理や現場教育の受講履歴の管理などに活用。カードの発行手数料は日本円にして約7700円で、技能者個人が負担している。
1995年にカードの発行が始まり、累計発行数は192万8157人(2019年12月時点)になった。欧州視察団の団長を務めた芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授によると、「野丁場での普及率は100%に近い」のだという。
CSCSカードには、英国政府が強制的に保有を求めていたり、法的な位置づけがあるわけではない。その意味では日本のCCUSと同じだ。今でこそ8割の就業者が保有しているものの、発行開始から6年がたった2001年12月時点でのカード保有者は約16万5000人にすぎなかった。
カードの普及が進む転機となったのは、英国政府が死亡事故の多い建設現場への規制を強化しようとした01年だ。「建設業界が自主的に改善を図ろうと動いた」(蟹澤教授)ことで、急速にカード保有が進んだ。技能レベルに応じたカードの色分けも取り入れ、技能レベルと技能者の賃金を連動させることにもつながったという。
普及率が急速に高まったことにより、現在では多くの元請けや発注者がCSCSカードを保有しない技能者の現場入場を認めていない。
日本のCCUSには、4月末までに24万1260人の技能者が登録した。蟹澤教授は「英国も今の普及率までには長い時間が掛かっている。日本の方がスタートとしてはいいペースだ」と述べた上で、「英国でCSCSが定着した背景には、若手を呼び込もうという業界の危機感がある」とCCUS普及の意義を再認識する必要性を強調する。
視察団に参加した建専連の岩田正吾副会長は欧州視察を終え、「日本で技能者の能力評価は始まったばかり。今回の視察で欧州との差を強く感じた。山積する課題を整理し、建専連を通して政策提言していきたい」と話している。
提供:建通新聞社