建設経済研究所と経済調査会は、2020年度の建設投資(名目値)が前年度比1・7%減の60兆7500億円となる見通しをまとめた。建設投資が減少すれば14年度以来6年ぶり。東京五輪関連の投資の一巡や消費増税に加え、新型コロナウイルス感染症による受注停滞の影響によって、民間住宅投資が6・0%減、民間非住宅投資が4・2%減になると予測している。ただ、コロナ禍が実態経済に与える影響は現時点で見通しが立たず、民間建設投資がさらに落ち込むことも懸念されるとしている。
20年度の建設投資は、今年1月の推計では1・8%増の63兆2700億円としていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で民間建設投資が弱含みになったとして、5月推計は60兆7500億円(1・7%減)へと2兆5200億円下方修正した。
民間住宅投資は6・0%減の15兆7000億円で、住宅着工戸数は6・6%減の82万5500戸。6年ぶりに90万戸を割り込んだ19年度の着工戸数(88万3700戸)をさらに下回ると推計する。
着工戸数の内訳を見ても、持ち家が5・4%減の26万8000戸、貸家が7・3%減の31万戸、分譲住宅が6・7%減の24万2000戸といずれも減少。年明け以降の着工が消費増税の駆け込み需要の反動で落ち込んでいることに加え、緊急事態宣言による受注の停滞が3〜6カ月後の投資の冷え込みにつながるという。
民間非住宅建設投資は、4・2%減の16兆2700億円で、このうち建築投資が8・3%減の10兆4900億円と前年度を大きく下回る見通し。製造業の設備投資の過剰感が高まり、工場の着工床面積が19年度の22・8%減をさらに下回る24・7%減の大幅な減少になると推計。民間土木投資は、リニア中央新幹線の出来高が見込まれるため、4・4%増の5兆7800億円となる。
一方、政府建設投資の推計は、2・8%増の22兆4800億円。災害復旧や国土強靭(きょうじん)化で公共事業費を増額した18年度第1次・第2次補正予算、19年度補正予算の一部も20年度に出来高として実現する。今後の経済の落ち込みしだいでは、年度後半の経済対策でさらに上乗せされる可能性もある。
建築物のリフォーム・リニューアルは、前年度と同じ1・2%増の伸び率になり、7兆6900億円の投資を見込んでいる。
提供:建通新聞社