もはや新規企業が参入できる工事ではない―。建設経済研究所が行った調査で、維持管理工事の担い手をめぐる課題が改めて浮き彫りになっている。維持管理工事は利益確保が難しいために1者応札や不調・不落が多く、結果として受注企業が固定化する傾向にある。同研究所のアンケートでも、「収支が拮抗(きっこう)」「赤字」などと回答した企業が全体の4割を超える結果が出ている。
日本建設業連合会(日建連)と全国建設業協会(全建)の会員企業を対象として、維持管理工事の課題をヒアリング・アンケート形式で調査した。回答した企業は279社。
回答した企業のうち、直近5年で維持管理工事を受注した実績があるのは77・4%。このうち受注した工事で利益を確保できていると答えた企業は52・4%と半数にとどまり、「収支が拮抗」(35・2%)、「若干赤字」(6・2%)、「赤字」(4・4%)の合計45・8%の企業で利益を確保できていない実態が明らかになっている。
利益を確保できていない理由を聞くと(複数回答)、「請負金額が比較的少額のため、利益を出しにくい」と回答した企業が58・7%と最多で、「工種数が多く施工量が小さいため、手間が掛かる」の49・0%、「現場が点在しており効率が悪い」の48・1%が続き、発注ロットの問題を上げる企業が多かった。
ヒアリングに答えた企業からも、「短期間に施工する工事を単体で発注されても利益が出ず、不調になる」、「4000〜5000万円以下の発注ロットでは採算性は厳しい」といった声が聞かれた。
通年の維持管理工事を受注していた企業の中には、「24時間365日の対応となるため、代理人が精神的に耐えられなくなり、数年で応札から撤退した」との回答もあったという。協力企業も集まらないため、「自社で工事を行うしかなく、採算性を考えると従来から工事を担当してきた企業しか施工能力はない」といった声も上がっている。
調査で明らかになった課題を踏まえ、建設経済研究所では、▽維持管理に関する公共事業費の確保と発注ロットの大型化▽積算基準の見直し▽国債・県債工事契約による切れ目ない発注▽監理技術者の負担軽減▽事業協同組合・地域維持型JVへの発注―などを推進するよう提言している。
提供:建通新聞社