新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、現場の一時中止を決める元請けが増える中、国土交通省は、元請けの資金繰りを支援する「下請セーフティネット債務保証事業」と「地域建設業経営強化融資制度」の活用を呼び掛けている。いずれも、受注した工事の工事代金債権を譲渡して金融機関から転貸融資を受けられる仕組みで、現場の中断に伴う下請けなどへの支払いにも活用できるという。
緊急事態宣言の発令後、現場での新型コロナウイルスの感染者の発生や感染防止対策の強化により、現場を一時中止する動きが広がっている。国交省は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う現場の一時中止や工期延長を受注者に責任のないものと扱うよう、公共・民間工事の発注者に要請しているが、当座の下請けや資材などの支払いは元請けが負担する必要がある。
国交省は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う資金繰りの悪化を防ぎ、下請け経費が適正に支払われるため、下請セーフティネット債務保証事業と地域建設業経営強化融資制度を活用するよう、3月11日、4月17日付の通知で建設業界に繰り返し呼び掛けている。
下請セーフティネット債務保証事業では、事業協同組合の転貸融資と建設業振興基金の債務保証を組み合わせ、元請けが工事の出来高の範囲内で資金を調達できる。公共工事に加え、一部の民間工事(電気、ガス、医療・福祉施設など)も対象になる。
例えば、請負金額1億円の公共工事で前払金(40%)を受け取り、出来高90%時点で同事業を利用すると、3800万円の融資を受けることができる。
地域建設業経営強化融資制度も、工事代金債権を担保に事業協同組合などから融資を受けられる類似の仕組み。保証事業会社の金融保証で、出来高を超える部分も融資の対象になる特徴がある。
=連鎖倒産防止に下請債権保全=
国交省はまた、公共工事・民間工事を問わず、下請け代金の債権支払いをファクタリング会社が保証する「下請債権保全支援事業」の活用を下請け企業に呼び掛けている。倒産などで元請けからの債権回収が困難になった場合に下請け代金の債務を保全し、連鎖倒産を防止する。
提供:建通新聞社