国土交通省は、建設現場に従事する一人親方に現場での働き方を確認し、社員(労働者)との年金保険の差を認識してもらうリーフレット=図=を作成した。リーフレットでは仕事の内容から、一人親方に自身の働き方を認識してもらうチェックリストを記載。社員として厚生年金に加入した場合、将来の年金受給額が国民年金の受給額を約2000万円上回るとの試算も示している。
本来は個人事業主として請負契約を結ぶ一人親方が、実際には企業からの指示で現場に従事していたり、日給制のように1日当たりの単価で報酬を受け取るなど、偽装請負を疑われる事例が以前からある。
リーフレットは20万部を作成し、全国建設労働組合総連合を通じて一人親方に配布した。一人親方に▽依頼に対する許諾▽指揮監督▽拘束性▽代替性▽報酬の労務対照性―の観点で自身の働き方を考えてもらうチェックリストを記載している。
具体的には、仕事先からの依頼を断る自由がなかったり、仕事先から就業時間を決められている場合は、社員(労働者)としての働き方に該当。毎日の仕事量・配分、進め方を判断する裁量が一人親方になく、仕事先から具体的な指示を受けている場合も社員に当たるなどとしてる。
さらに、社員として厚生年金に加入した場合と一人親方として国民年金に加入する場合の引退後の受給額を比較。国民年金に加入すると、夫婦2人での月額の負担額は3万2820円(20年度から3万3080円)。65歳から平均寿命である81歳までの16年間受給すると、受給額は総額2496万円になる。
一方、厚生年金の標準モデル(平均年収480万円)では、月額の年金負担額は3万7515円と国民年金よりも負担は重いが、受給額は4432万円と国民年金の1・8倍になる。
時間外労働の上限規制や社会保険加入の許可要件化などの規制強化に伴い、法規制を逃れる目的での一人親方が増加することが懸念されている。国交省は、今夏に学識経験者や建設業団体を交えた検討会を設置し、20年度末までに一人親方化を抑制する抜本的な対策をまとめるとしている。
提供:建通新聞社