国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録で懸念されている「人材の引き抜き」について、新たに追加の防止策を講じる。初期設定時のCCUSの閲覧範囲は、技能者と所属事業者の同意がなければ全情報が非開示となっているが、引き抜きにつながる恐れのある技能者本人の電話番号などを事業者のものに変更できるようにする。また、施工体制登録を代行した上位下請けが技能者情報を閲覧する行為は、引き抜きの懸念を引き起こすとして「厳正に対処する」方針だ。
CCUSには、運転免許証などで本人確認された技能者情報が登録され、登録情報の真正性が確保されている。このため、技能者情報の開示には技能者本人と所属事業者双方の合意が必要で、開示する情報を選択することもできる。合意があっても、元請けや上位下請けには、作業員名簿に記載された情報と過去の自社の現場での就業履歴に限って閲覧を認めている。
ただ、こうした閲覧の基本条件の周知が徹底されていないため、事業者情報と技能者情報が他社から自由に閲覧できるという誤解が生じ、所属する技能者の引き抜きを懸念する声が根強くある。
国交省と建設業振興基金は、閲覧の基本条件を周知するとともに、事業者が判断すれば、登録する技能者本人の電話番号やメールアドレスなどを事業者のものとできるように運用を見直し、懸念払しょくに万全を期す。
一方、技能者がそれぞれの現場で就業履歴を蓄積するために必要な施工体制登録では、事業者間で合意すれば、元請けや上位下請けが技能者の施工体制登録の作業を代行できる。国交省は4月1日に建設業団体に送付した通知で、元請け・上位下請けが事業者間の合意を強制したり、技能者情報の画面を閲覧することが「悪質な運用」に当たると指摘した。
そうした行為は代行機能の趣旨に沿わないだけでなく「優越的な地位の濫用」に当たるとも指摘。その上で、こうした行為に及んだ元請け・上位下請けに対し「厳正に対処する方針」であると通知に明記した。
提供:建通新聞社