国土交通省は、技能者の技能レベルに応じて賃金が支払われる枠組みを構築する。建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した「建設技能者の能力評価制度」で、技能者の能力評価を行う専門工事業団体に対し、4段階の技能レベルに応じた職種別の「処遇目標」を3月末までに設定するよう要請。この処遇目標(年収ベース)を目安に元請け・下請け間で請負価格を決め、雇用主である専門工事企業が賃金を引き上げるという処遇改善の流れをつくる。
建設技能者の能力評価制度では、CCUSに蓄積された就業履歴と保有資格で、技能者の技能レベルを4段階(レベル1〜4)で評価する。各職種の専門工事業団体はレベル分けのための能力評価基準を策定し、同省の認定を受ける。
同省は、3月末までに登録基幹技能者講習を実施している35職種の基準を作成するよう各団体に求めており、20年度からCCUSに登録した技能者の4段階評価を本格的にスタートしたい考えだ。
能力評価制度の本格運用に合わせ、4段階の技能レベルに応じた技能者の処遇目標を年収ベースで設定するよう、各職種の専門工事業団体に求めている。この目標を尊重することを元請け団体と専門工事業団体が合意した上で、双方の会員企業である元請け・下請け間で請負価格を定める。
専門工事業側の動きに合わせ、元請け側にもこの枠組みに応じる動きが出始めている。昨年12月13日に開かれた中央建設業審議会で、日本建設業連合会の山内隆司会長は「4段階のカードの色分けに応じた労務費の支払いを検討している」と発言した。
この枠組みは、技能者の技能と経験に応じて給与を引き上げるという、CCUS構築の目的を実現するためのもの。処遇目標を見据えた請負価格で契約が結ばれ、雇用主である専門工事企業が技能者の給与を引き上げれば、労務費の実勢価格も上昇し、この実勢価格を反映する公共工事設計労務単価も上がる。
労務単価の上昇はさらなる請負価格のアップにもつながるため、国交省は技能者の処遇改善に向けた好循環が生まれると期待している。
提供:建通新聞社