赤羽一嘉国土交通相が建設専門紙の共同インタビューに応じ、相次ぐ自然災害に見舞われた昨年を振り返り、「国民の命と暮らしを守る防災・減災対策を都道府県・市区町村と連携して推進する。そうした一体感をリードしていきたい」と、新しい年2020年への決意を語った。昨年12月に閣議決定した19年度補正予算案と20年度当初予算案では、国交省関係の公共事業費は引き続き高い水準を維持した。台風被害からの復旧・復興に加え、防災・減災、国土強靱(きょうじん)化に「着実に手を付けていく」との考えも示した。
◇被災地の声に応える予算の裏付けを
―昨年も台風19号をはじめとする自然災害が猛威を振るいました。
「大臣に就任した昨年9月11日に上陸した台風15号をはじめ、日本列島は多くの台風被害に見舞われた。気候変動によって、自然災害が従来よりも激甚化、頻発化している。特に台風19号では、国直轄の7河川をはじめ、決壊した河川堤防が140カ所に上るなど、甚大な被害をもたらした」
「埼玉県、神奈川県、群馬県、長野県、茨城県、福島県、宮城県と災害発生の直後から被災地を訪れた。その際、被災地の首長が異口同音に訴えるのが『危険箇所はここだけではない』『国土強靱化のための予算の裏付けがほしい』ということだ」
―そうした声を受けて昨年末に編成された19年度補正予算案と20年度当初予算案には、昨年とほぼ同規模の公共事業費が盛り込まれました。
「国交省分としては、19年度補正予算案に1兆1865億円、20年度当初予算案に5兆9368億円の公共事業費を計上した。補正予算と当初予算を『15カ月予算』として、まずは被災地の復旧・復興と『防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策』を着実に実行に移す」
「予算だけでなく、財政投融資にも19年度補正予算案で6123億円、20年度当初予算案で2兆4555億円を措置した。これにより、新名神高速道路の6車線化、成田国際空港の滑走路延伸・新設、なにわ筋線の整備など、ストック効果の高い社会資本整備や大型プロジェクトが前進することになる」
◇郷土を守る建設業 新担い手3法を現場に反映
―建設業の働き方改革や生産性向上、災害対応の充実を柱とした新・担い手3法が本格運用の年を迎えました。
「昨年発生した災害の現場でも、最前線で復旧に全力を尽くしてくれたのが地域の建設企業だ。河川堤防が決壊した箇所をほぼ1週間で仮復旧し、復旧工事に早期に着手できたのも、郷土を守るという気持ちで地域の建設企業が24時間体制で闘ってくれたおかげだ」
「そのように国土を守る役割を担っている建設業の担い手が不足している。昨年6月に成立した新・担い手3法の精神を現場に反映しなくてはならない。特に重要なのは適正な工期設定と施工時期の平準化。6月に工事を発注してしまうと、実質の工期は半年程度しかなくなる。国がまず率先して平準化に取り組み、地方自治体にも実行を促していく」
―建設キャリアアップシステム(CCUS)をどのように業界に普及させていきますか。
「培った技能が正当に評価されず、転職すればまた一からやり直す、ということでは若年層が建設業に入職してはくれない。このことを長期的な課題として捉えるのではなく、喫緊の課題としてCCUSの普及を進める。4段階の能力評価に応じた公共工事設計労務単価など、具体的な施策を講じることが業界が変わったと感じてもらうことにもつながる。CCUSを何とか成功させたいと考えている」
◇新技術の活用、直轄工事で原則義務化
―ICT技術やAI(人工知能)などの新技術を建設現場にどのように実装させていきますか。
「自然災害で被災し、人が立ち入るのが危険な箇所では、ドローンや無人化施工がすでに活躍し始めている。人手を補うAIやロボットの活用は避けられない。i−Constructionによって新技術の現場実装を加速し、生産性を高めることは極めて重要だ。2020年度からは直轄工事でNETIS登録技術の活用を原則として義務化し、技術開発を活性化していきたい」
提供:建通新聞社