国土交通省は、建設工事の安全衛生経費を内訳として明示した標準見積書の普及を促進する。標準見積書は、社会保険加入の原資である法定福利費の請求時の使用が広がっており、この前例を踏まえて安全衛生経費が適切に支払われる環境を整備する。下請け企業が標準見積書で経費を請求する安全衛生対策は、工種ごとに「安全衛生対策項目の確認表」を作成し、元請け・下請けに実施する対策と費用負担の区分を共有してもらう。
12月9日の「建設工事における安全衛生経費の確保に関する実務者検討会」に検討会の提言案を示し、安全衛生経費の適切な支払いのための実効性ある施策として、標準見積書と確認表の作成・普及を盛り込んだ。
安全衛生対策項目の確認表は、元請けと下請けが契約時に対策項目を確認しやすいよう、工種ごとに標準的な項目や手続きの流れなどを記載する。例えば、安全掲示板や墜落制止用器具などの項目別に元請け・下請け間の費用負担を区分し、契約時に両者で合意してもらうのが狙いだ。
標準見積書には、確認表で下請けが実施することになった安全衛生対策項目の経費の合計額を内訳として明示し、元請け(上位下請け)に請求する。安全衛生経費を直接工事費や間接工事費などと並んで独立させる「別枠化」については、積算体系を根本から見直すことになるため、「現実的ではない」とし、標準見積書による内訳明示による請求・支払いの適正化を図る。
同省は、年内にまとめる検討会の提言を踏まえ、確認表と標準見積書を作成するためのワーキンググループを設置する。鉄筋、型枠、機械土工などの職種で確認表と標準見積書のサンプルを作成し、各職種に展開する。将来的には、建設キャリアアップシステムを活用した「建設技能者の能力評価制度」や「専門工事企業の施工能力の見える化制度」で、安全衛生経費を適切に請求したり、経費を支払う企業を評価する。
提言案に盛り込まれた実効性ある施策には「安全衛生経費の重要性・必要性を周知する戦略的広報」も盛り込まれた。リーフレット・ポスターの作成などを通じ、安全衛生経費の重要性を周知する。さらに、安全衛生経費の実態に関するフォローアップ調査も行い、継続的に施策の効果を分析するとした。
また、安全衛生経費が建設業法19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものであることを周知するため、立ち入り検査などを通じて法令順守の徹底を図ることも求めた。
提供:建通新聞社