国土交通省の中央建設業審議会の「建設工事標準請負契約約款改正ワーキンググループ」は11月11日、標準請負契約約款(公共、民間甲・乙、下請け)の改正案を大筋で固めた。中建審が年内にも受発注者に実施勧告する。改正案では、工事完成前の工事代金債権の譲渡を制限する「譲渡制限特約」を維持するが、債権譲渡で得た資金の使途を対象工事で使用することなどを条件として、注文者が債権譲渡を認める契約書を選択できるようにする。受注者が譲渡制限特約に違反した場合、発注者が無催告で契約解除できる規定も設ける。
今回の改正では、改正民法が2020年4月1日に施行されることを受け、主に債権関係の規定を見直す。
現行の契約約款では、注文者の承諾を得ない債権譲渡を禁止しているが、改正民法では債権譲渡を理由とする契約解除を認めていない。ただ、WGは、契約が長期間になる建設工事では、債権譲渡を引き続き制限し、発注者の利益を保護する必要があるとの結論に至った。
ただ、注文者が訴訟されるリスクを回避できるよう、債権譲渡を認める条文も合わせて規定する。注文者は、債権譲渡を認めない譲渡制限特約とのいずれかを選択できる。債権譲渡を認める場合は、注文者が譲渡を承諾し、債権譲渡で得られた資金の使用を対象工事に限定する条件を付す。
譲渡制限特約を設けているにも関わらず、注文者が債権を譲渡すれば「無催告」で契約を解除できるようにする。催告しても譲渡された債権を注文者が取り戻すことは事実上難しく、無催告で契約解除できるよう規定を整える。
一方、発注者が瑕疵(かし)の修補や損害賠償を請求できる担保期間は原則2年(設備機器、室内装飾などは原則1年)に見直す。瑕疵があった場合、発注者には2年以内に修補や損害賠償を通知または請求。通知のみを行った発注者は、損害額の算定根拠などが必要な損害賠償請求までの猶予期間を1年置く。
国交省は12月に開く中建審総会に改正案を報告し、了承を受ける方針。年内に中建審が受発注者に改正約款の実施勧告を行う。改正約款は、改正民法の施行に合わせ、20年4月1日に施行する。改正建設業法関連の規定は同年10月1日に施行する見通し。
提供:建通新聞社