第14回建設トップランナーフォーラム(14)
総括コメント
■地域の支え、持続性向上のリードに期待
全日本建設技術協会の大石久和会長と農林中金総合研究所の皆川芳嗣理事長が、第14回トップランナーフォーラムの最後に、複業化による地域振興を実践する建設トップランナーの事例発表を総括した。
大石会長は「この国は大きな問題に直面している」と、東京一極集中や高齢化、少子化を例に挙げながら「大変だ≠ナ終わってしまい、具体的な議論がなされず、策も打ち出せていない」と国やマスコミの対応を批判。
昨年12月に国連が発表した名目GDPのデータで、世界で経済成長していない国が日本とリビアだけだったことを紹介し、「経済的地位から見ても大きく転落している」と、1995年に世界経済の18%を占めていた日本のGDPシェアが5%を切り、それに対して問題解決につながる施策が講じられていない現状を嘆いた。
南海トラフ地震や首都直下型地震の発生が高確率で予想され、気象が年々狂暴化する中で準備をせず、逆に防災事業費を20年前の44%まで減らしている国の姿勢も痛烈に批判した。
こうした国などの動きと比べ、汗をかいて課題への対策を実践し、少しずつでも成果を挙げている建設トップランナーの取り組みを高く評価。「地域の実情に詳しい建設業が、その知識を生かしながら多くの方々と連携し、地域の振興のために新たな産業を興す。その具体的に努力している姿を見聞きするのが楽しくて仕方がない」と述べ、「地域を支えるため、地域に良質な雇用を生む皆さんの努力に期待する。日本を動かせるよう頑張ってほしい」と会場の地域建設業にエールを送った。
皆川理事長は、農業分野で注目される取り組みとして、働き先が減少している障害者と、手間仕事の人手が足りていない農家とのマッチングなど福祉分野と連携する「農福連携」を紹介した。地元資本が連携して地域の資源、特長を生かした宿泊体験を提供する農山漁村滞在型旅行の「農泊」についても説明した上で、これらを既に実践しているトップランナーの先見性などに感嘆。「新しいこと、付き合いがなかった異分野とのつながりで、新しい価値が生まれることを改めて実感した」などとコメントした。
今回のテーマ「原点回帰」について、「地域自体をどう生かしていくか。地域にとどまり、誰が最終的に地域のことを考えるかだ」と強調。これを担うのは「地域建設業をおいていない」と訴えた。最後に「建設業と同様に地域にこだわって生きている農業、林業といった1次産業の仲間も輪に加えて、地域の持続可能性をいかに高めていけるか、フォーラムを通じて全国に発信し、一つのムーブメントにしてほしい」と呼び掛けた。(地方建設専門紙の会)
※登場者の肩書は6月28日時点のものです。