第14回建設トップランナーフォーラム(10)
第3部 再生可能エネルギー・環境事業への進出 環境リサイクル―ミラクルソルの展開
■ガラス再資源化素材でヒートアイランド抑制
斜面対策工事などを得意とする日本建設技術(佐賀県唐津市、原裕社長)は、20年以上前に、リユースが難しい容器包装ガラスびんに着目。びんの再資源化による廃棄物の排出抑制と、最終処分場の延命化を目指した新素材の研究に着手した。ここで開発した軽量・強固な多孔質間隙構造の発泡廃ガラス(FWG)を『ミラクルソル』と名付け、新たに環境分野に進出すること決め、これまでに28もの工法を生み出してきた。
このうちFWG透水性舗装工法は、降雨時の保水と晴天時の蒸発により、ヒートアイランド現象の抑制を図ることなどを目指した環境土木工法≠フ一つ。原社長は「夏場の路面温度は70度近くまで上がり、路面に近い幼児やベビーカーなどへの影響は大きい。気化熱により少しでも温度を下げられれば」と、工法開発の目的を説明した。
同工法は、路面が透水性インターロッキング≠ニ空隙率15%以上の透水性アスファルト≠フ2種類を用意。インターロッキングは歩道や建築物の外構、アスファルトは歩道やパーキングリアなどでの使用を想定している。いずれも、路床の上に、粒径の大きいミラクルソルを転圧した保水層、その上に粒径の小さいミラクルソルのフィルター層を設けてから路面を整備する。
気化熱の発生には「保水層でしっかり蓄えた水を毛管現象で吸い上げて、路面が湿り気を維持し続けなければならない」(原社長)。これらの効果を確認するための供試体による室内試験を行ったところ、粒径2_以下のミラクルソルの水分保持量が砂の3倍以上。粒径10〜50_と2_以下とを混合するとさらに増加することが分かった。また、水分の吸い上げ高さは10〜50_の試料の実験値が理論値を89倍も上回り、「ミラクルソルの連続間隙構造内を経由して毛管現象が生じた」(原社長)と推測するほど、大きな効果が得られた。
これらの試験が、「透水性アスファルト舗装の空隙に2_以下のミラクルソルを充填することで、確実に毛管現象を発現させる工夫につながった」という。この透水性アスファルト舗装を、実際の現場で施工。その効果を通常のアスファルト舗装と比較すると、16・5度もの路面温度差を確認した(約4_の降雨から4日後の温度を計測)。
原社長は、保水層を20〜30aに厚くすることで、長期間にわたり路面温度の低下を持続できると指摘。さらに、道路だけでなく、高速道路のパーキングエリアや、公共施設・マンション・一般家庭の外構部に同工法を施工すれば、地域の保水力が上昇。近年頻発している都市型水害の緩和につながるとの見方も示した。(地方建設専門紙の会)