第14回建設トップランナーフォーラム(7)
第2部 高齢化社会を支える地域建設業 介護事業・介護病院建設で地域を支える
■複業の付加価値で魅力的な本業創出
高齢化社会を迎え、福祉・介護は日本を支える重要な産業になっている。地域の建設業者の中には、この分野に進出し成果を上げる企業も現れている。1999年から介護事業分野に進出した美保テクノス(鳥取県、野津一成社長)の清水勉取締役設計部統括部長は、同社のこれまでの取り組みと今後の課題について話した。
同社は、公共事業の削減と地方経済の悪化で予想される売り上げの減少に対して、分社やM&A、新規事業などによって売り上げと雇用を維持してきた。その一環として介護事業に着手した。
介護事業分野への進出のために医療経営経験者が入社し、社内に医療介護のノウハウを集積した。営業部や設計部、工事部との情報共有や連携が進展し、医療介護施設の発注者との信頼関係づくりが始まり、土地情報提供、給食事業提供、銀行連携、助成金申請支援など美保グループ各社の複数の本業の組み合わせによる相乗効果が生まれ、発注者との協調関係が育まれていったのが美保テクノススタイルの「複業」だった。
同社は、これまでに鳥取県、島根県を中心に介護施設43、診療所13、薬局7の計63施設を建設している。介護事業への進出は、介護ノウハウを活用した提案営業による建設需要の創出につながり、発注者との信頼関係に展開した。
清水氏は「建設業としてのサービスを、(建築物という)モノだけでなく、(経営支援など)コトでも行いたい。17年間で介護居室を1527室作らせていただいた。これまでの実績によって地元で頑張れる」と、経験の蓄積が次の事業展開につながることを強調した。
同社は「複業」により付加価値を高めた本業を磨き上げていくことを原点回帰と捉えている。そして本来の建設業の体力を維持増強することにより、インフラの維持管理や災害復旧などで活躍し地域を支えていくことを目指している。
今後の課題と事業展開として美保テクノス型「複業」で付加価値を高め魅力的な本業を創出することを目標にしている。具体的には19年度からBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)戦略部を創設し、BIMによる生産性・品質の同時向上や、関西・山陽への設計・施工受注の営業展開を推進している。将来は環境検証や自動積算などにもBIMを活用する計画だ。
清水氏は「魅力的な建設業であると地域の皆様に思っていただけるような力をつけていきたい。山陰にはエネルギーがあると思っている。地域の役に立てる建設業として、本業と複業を盛り上げ、強靭(きょうじん)な会社を目指したい」と力を込めた。(地方建設専門紙の会)
地方建設専門紙の会