第14回建設トップランナーフォーラム(4)
第1部 農業などへの複業化 地域の守り手―ストックビジネスや農業に展開
■複業通じて建設業を活性化
愛知県豊田市にある太啓建設は▽フロービジネス▽ストックビジネス▽アグリビジネス―の3本柱で、「造注」をキーワードに複業の取り組みを進め、経営基盤の強化を図っている。「造注」とは請負だけに頼らず、自ら仕事をつくり出して完成させることを意味する。建設産業活性化の手段として最重要と考える複業の取り組みにより、近年は安定した売上高を実現する。
土木・建築工事などを請け負うフロービジネスにおける、今期の完成工事高の予想は約163億円。創業当初は公共土木工事が中心だったが、民間建築工事の営業強化により、現在は建築工事の割合が土木工事を上回る。
建設関連分野のストックビジネスは、@CRE事業・不動産開発ビジネスA地域密着型「住宅を守るビジネス」Bストック診断ビジネス(デジタル画像調査・赤外線調査)C耐震改修ビジネスD再生可能エネルギービジネス―の5本柱で展開。
CRE事業では、顧客の不動産の有効活用を提案できる組織に進化させ、多くの不動産開発事業を成功させた。また耐震改修ビジネスでは、特許工法の幕天井「ファイバーシート天井システム」の技術に着目し、開発者とともに一般社団法人を立ち上げた。国土交通省のNETIS登録も行い、営業・普及活動を展開中だ。
農業関連分野のアグリビジネスに関しては一般法人として2011年4月に農業へ参入し、水稲栽培を8年間行ってきた。18年2月には「TAIKEIファーム株式会社」を設立。その後に農地所有適格法人の認定を受けるなど、水稲栽培、イチゴ栽培に取り組む。イチゴについては、栽培技術を取得するため地元JAのいちご部会に加入し、社員を1年間部会員の農家で研修させている。現在は苗づくりに入っており、常務取締役の永田雄司氏は「12月の初出荷を楽しみにしている」と話した。9000平方bの社有地に3600平方bの体験型いちご栽培施設を建設する計画も進む。さらに地元農協と連携した葉物野菜のハウス栽培事業も計画し、社員を研修に参加させ、技術を学ばせている。
リクルート活動では学生にアグリ事業の計画を説明した。学生の関心も高く、来春の新卒生では大学の農学部出身者2人、農業大学校出身者1人の計3人に内定を出すことができた。
地域の建設業の存在について永田氏は「長年本業で培った技術とノウハウに加え、専門的な人材や機材を持ち、地域の状況を熟知しているため、地域におけるさまざまな役割を期待されている」と指摘。その役割を果たすためにも「複業の取り組みを強化させ、活発化していくことが大切。いずれの事業も基本は地元で、『地域の和』が重要」と考えている。今後もこの基本方針に沿って複業化に力を入れる考えだ。(地方建設専門紙の会)
地方建設専門紙の会