国土交通省は、6月7日までに成立した新担い手3法(改正建設業法・入契法、改正品確法)で、公共工事の発注者に施工時期を平準化する努力義務を課すことを受け、特に対応の遅れている市区町村への支援に力を入れる。国交省などの調査によると、柔軟な工期設定が可能になる債務負担行為や繰り越しを積極的に活用する市区町村は3割に満たない。同省ではまず、発注規模が年間100億円を超える市区町村に対象を絞り、平準化を重点的に求める考えだ。
単年度で予算を確保する公共工事では、年度末に工期を完了する工事が依然として大半を占め、4〜6月の施工量は急激に落ち込む。この繁閑の差は人材の効率的な活用を阻害し、生産性を低下させるため、建設企業の経営上の最も大きな課題の一つになっている。
平準化は、現場の働き方改革を実現するためにも求められている。工期を年度末に無理に押し込むことは、余裕のない工期を設定し、現場に長時間労働を強いることにつながるためだ。
改正入契法では、公共工事の発注者に施工時期の平準化を推進する努力義務を課す。今後、入契法に基づく入札契約適正化指針を閣議決定すると、国交省・総務省が措置状況に関する報告を発注者に求め、その結果を公表できるようになる。
さらに改正品確法では、債務負担行為と繰越明許費の活用という、平準化を図るための具体的な措置を講じることも発注者の責務に位置付けた。通常は単年度で予算計上する工期1年未満の工事でも、平準化のために債務負担などの活用を求める。
ただ、施工時期の平準化に対する市区町村の意識は依然として低い。国交省などが行った入札契約適正化法に基づく実施状況調査(2018年8月1日時点)によると、平準化のために債務負担を活用した都道府県は全47団体に上るものの、市区町村は全1721団体のうち26・0%の447団体にとどまった。繰り越しの活用も442団体と同様の状況だ。
国交省のアンケート調査では「債務負担行為は議決が必要で、予算執行管理も煩雑になる」「年間の発注工事件数が少なく、債務負担行為活用の必要性を感じていない」「(財政当局に)繰り越しは『悪』という考え方が根強い」といった声も聞かれた。
こうした意見も踏まえ、国交省は地域単位での平準化の目標値を設定することに加え、国の補助金・交付金事業での債務負担の設定などを促す。年間の発注金額が100億円以上を超える市区町村でも、債務負担行為を活用していない市区町村が43・3%に上っており、まずは発注規模の大きい市区町村に重点的に改善を求めていく考えだ。
提供:建通新聞社