日本建築学会(古谷誠章会長)は13日の記者会見で、運用方法を見直す動きがある建築士試験について、設計製図試験にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や3次元CADの導入を求めていくことを明らかにした。また、新たに建築士資格登録の際の実務経験として扱われる予定の「建築物に関わる研究」について、公平性を確保するため、対象となる成果物の範囲などについて意見を表明した。
2018年12月の改正建築士法成立により、建築士試験の受験資格が見直され、実務経験が受験時ではなく登録時の要件に変更となる。法の施行を控えて、建築士試験の運用方法について国土交通省と関連団体が中心となって議論を進めている。
建築士試験の製図試験については、建築設計三会(日本建築士事務所協会連合会、日本建築士会連合会、日本建築家協会)が18年に自民党建築設計議員連盟に提出した「建築士資格制度の改善に関する共同提案」で、CADの導入を提案していた。日本建築学会は、従来の手描きの試験については改善が必要としつつ、今後、設計・施工・維持管理の各段階でBIMを含めた3次元技術の活用が進むとみており、教育や実務の現場と試験の間に乖離(かいり)がないことが重要と指摘した。この他▽受験機会の増加▽試験の難易度の適正化▽「計画・設計能力を問う部分」と「製図能力を問う部分」の分離―などを求めた。
「建築物に関わる研究」については、国土交通省が設置した「建築士資格に係る実務経験のあり方に関する検討会」の中間取りまとめにおいて、新たに実務経験として扱う方針が示された。日本建築学会では、客観的に判断可能な基準を設定するため、同会の論文集をはじめ、査読を経て公表される形の成果物により実務経験を判断するよう提案した。また、土木学会や空気調和・衛生工学会など関連学会に提出された成果物も同等に扱うのが望ましいとした。この他、対象とする著者の範囲や実務経験として算定する期間についても意見を表明した。
以上の意見をまとめて、国土交通省に5月中に提出する。古谷会長は「建築士法の改正の契機となったのは受験者数の減少だ。資格を取るための勉強により受験者に負担を掛けないよう、教育や実務で学んだ内容が建築士資格の取得につながるような試験の在り方を考えなければならない」と強調した。
提供:建通新聞社