国土交通省は、中央建設業審議会に「建設工事標準請負契約約款改正ワーキンググループ」(座長・大森文彦東洋大学教授)を設置し、4月16日に初会合を開いた。2020年4月施行の改正民法に対応した標準契約約款の改正案を今秋までにまとめる。改正民法では、債務者の承諾を得ない債権譲渡を認めたが、請負契約には契約期間が長く、変更・消滅などの不確定要素が多い。WGでは、こうした請負契約の特性を踏まえ、特約条項で債権譲渡を制限することも論点の一つになる。
建設業法では、中建審が▽公共工事標準請負契約約款▽民間建設工事標準請負契約約款(甲)▽民間建設工事標準請負契約約款(乙)▽建設工事標準下請契約約款―を作成し、建設工事の受発注者に実施を勧告すると定めている。
学識者や建設業団体の代表者で構成するWGは、120年ぶりに債権関係の規定を見直した民法改正に伴い、標準契約約款の改正案を今秋まで検討。年内に開く中建審で標準契約約款を改正し、建設工事の受発注者に改正約款に沿った契約約款の見直しを勧告する。
改正民法では、債権譲渡による資金調達の円滑化を図るため、当事者間で債権譲渡の制限特約を結んでいても、債務者の承諾を得ずに行われた債権譲渡を有効とした。
現行の標準契約約款では、代金債権などの譲渡制限を定め、債務者の承諾を得ないと債権を譲渡することはできない。例えば、工事請負代金債権を担保に出来高融資を受けられる「下請セーフティネット債務保証事業」も、発注者の承諾を得ることが条件の一つだ。
ただ、公共工事で無制限に債権譲渡を認めると、使途に制限がある前払金の取り扱いなどが課題になる。債権譲渡した場合の完工意欲の低下、下請けへの適正な支払いなどの観点も含め、特約条項と特約条項違反に伴う契約解除の在り方を検討する。
この他、改正民法では、請負契約における例外規定を廃止し、契約内容に不適合な場合に修補等の履行の追完・損害賠償請求・契約解除に加え、「代金減額請求」をできるようにした。
注文者の権利の期間制限も見直し、契約に不適合であることを認識してから1年以内に通知すれば、注文者がこれらの権利を行使できるとした。瑕疵(かし)があっても、契約を解除できなかった建物・土地の制限規定は廃止し、債務不履行が軽微である場合を除けば、注文者が契約を解除できるようにした。
WGでは、これらの関係する改正民法の規定を標準契約約款に反映。開会中の通常国会に提出された建設業法改正案の成立後は、同法への対応についても議論する。
提供:建通新聞社