国土交通省、建設業振興基金、建設業団体などが参加する「建設キャリアアップシステム運営協議会」(会長・野村正史国交省土地・建設産業局長)は3月27日に5回目の総会を開いた。4月1日にシステムが本運用することを控え、国交省の野村局長は「登録の進捗は厳しい状況にある。建設業が持続可能な産業となるため、業界全体にさらにシステムを普及させる必要がある」と、普及促進に全力を注ぐ決意を表明。運営主体の振興基金は審査基準を見直して申請時の不備を減らし、登録までの期間を短縮させる方針を示した。
昨年4月に受け付けを開始した建設キャリアアップシステムの登録は、事業者約1万社、技能者約2万人にとどまった。総会で決定した事業計画では、19年度中に事業者登録を累計13万社、技能者登録を100万人とする目標を改めて設定。野村局長は「目標を前倒しで達成できるように臨み、遅れを取り戻したい」と話した。
総会に報告された普及促進策では、登録申請や現場利用(現場・契約情報登録、施工体制登録など)のニーズに分けてセミナーを開催するとした他、建設キャリアアップカードとマイナンバーカード、資格者証などの統合を検討するとした。API連携の認定事業者と合同で説明会を開き、民間システムと建設キャリアアップシステム双方の利用もアピールする。
技能者情報、事業者情報の登録申請における不備の発生率は90%を超えており、そのことが登録
が遅れる原因になっている。振興基金は登録申請書を見直し、不備の発生率が高い社会保険加入状況や保有資格の記載内容を簡素化。不備の発生率を少なくとも50%未満に低下させ、カード発行までの期間を短縮させる。
行政書士会と連携して行政書士がIDを取得して登録作業を代行することも認める。また、厚生労働省は、19年度からカードリーダーの購入費を助成金の対象とする考えも示した。
会合の中で、日本建設業連合会の村田誉之建設キャリアアップシステム推進本部長は「この1年を正念場とし、登録申請が進むように最大限努力する」と表明した。
全国建設業協会の中筋豊通労働委員会委員長は、技能実習生にシステム登録を義務付けることについて「不法就労のチェックのためのシステム活用は、処遇改善を目的とした本来の性格を変容させ、警戒感を増幅させる」との懸念を示した。国交省の小笠原憲一建設市場整備課長は「技能実習生の失踪者の4割を建設業が占めている。失踪問題に業界としてしっかり対応する必要がある」などとシステム活用に理解を求めた。
提供:建通新聞社