政府の2019年度当初予算案で、国土交通省分の公共事業費は前年度額を15・1%上回る大幅な増額となった。昨夏に発生した一連の大規模災害は、自然災害の脅威を国民の意識に改めて植え付けた。こうした国民の不安を払しょくするため、政府は「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」を昨年12月に閣議決定。公共事業費の増額もこの緊急対策を受けたものだ。緊急対策の中核を担う国交省は今年1年、災害に強い国土づくりをどのように進めるのか。石井啓一国交相への共同インタビューで聞いた。
「公共事業費 国交省関係は15%増」
―昨夏以降の自然災害は、日本各地に大きな被害をたらしました。
「18年は、大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震など、各地で自然災害が相次ぐ1年だった。私自身も被災した各地を訪れ、自然災害の猛威を改めて実感した。西日本豪雨では広範囲、長時間の降雨により、各地で水害・土砂災害が複合的に発生した。台風21号での関西国際空港の浸水被害、北海道胆振東部地震の斜面崩壊はいずれも衝撃的な事象だった」
「これらの被害を受け、重要インフラの機能確保に向けた緊急点検を行った。点検結果を踏まえ、政府全体で『防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策』を実施する」
―政府の18年度第2次補正予算案と19年度当初予算案に緊急対策の事業費が計上されました。
「緊急対策の事業費7兆円のうち、国交省関係はおおむね3兆6000億円。国交省分の予算は、18年度2次補正予算案に6183億円、19年度当初予算案に7153億円を計上している。特に19年度当初予算案では消費増税に伴う『臨時・特別の措置』を活用して緊急対策の経費を上乗せし、公共事業費は15・1%増の5兆9663億円に増加した」
「社会資本整備は未来を切り拓く投資。安全・安心の確保や社会の生産性を高めるストック効果を最大限に発揮できるよう、重点的、戦略的な取り組みを加速させる」
「生産性革命貫徹≠フ年に」
―16年から進めてきた生産性革命の取り組みも4年目に入ります。
「昨年は生産性革命を深める『深化の年』として、先進プロジェクトの具体化に取り組んできた。19年は生産性革命をさらに推し進める『貫徹の年』として、生産性向上の成果を結実させたい」
―その中でも、i−Constructionの今年の展開は。
「ICT施工は、土工や浚渫など工程ごとに導入してきたが、これからは、工事全体でICTが導入できるよう、基準づくりを進めたい。ICT化により、作業時間を3割縮減する効果も確認されており、都道府県や中小建設業にもさらに展開していく」
「働き方改革 国交省、建設業の二人三脚で」
―建設現場では、生産性向上と並び、働き方改革を進める必要もあります。
「働き方改革は建設業にとって、長年の慣行を打破する最大のチャレンジ。国交省が昨年3月に『建設業働き方改革加速化プログラム』を策定し、業界団体とも2度にわたり意見を交わした。業界自らが改革に取り組んでいることは歓迎すべきことだ」
「これら足元の対策に加え、今年は長時間労働の是正、現場の処遇改善、生産性向上を柱に、建設業法改正に向けた準備を進める。建設業が働き方改革の最先端と言われるよう、国交省と建設業界が二人三脚で改革に取り組みたい」
―今年4月には建設キャリアアップシステムの本格運用も控えています。
「技能者の就業履歴や保有資格を業界横断で蓄積する建設キャリアアップシステムは、1月から限定運用、4月から本格運用を開始する。システム導入で技能者一人一人が技能や経験に見合った処遇を受けられる環境が整うことを期待している。国交省としてもシステムの情報を活用した能力評価制度を構築するとともに、制度の周知・普及に精力的に取り組む」
―建設業への外国人受け入れをどのように進めるお考えですか。
「建設業にも改正出入国管理法に基づく新在留資格で外国人材を受け入れる。政府の基本方針と分野別運用方針では、国内人材の賃金に悪影響を与えることのないよう、受け入れ企業には日本人と同等以上の報酬を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給する要件を課すことにした。国内人材確保と現場の生産性向上を大前提として、外国人材を含めた建設業の担い手確保に全力で取り組む」
提供:建通新聞社