建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)は、「建設現場における不安全行動・ヒヤリハット体験に関する実態調査」の分析結果を報告書にまとめた。調査の結果、労働災害につながる恐れのあるヒヤリハット体験者は有効回答者1万8683人の58・2%に上り、高ストレス、不眠の人は、そうではない人と比較して、自らに原因のあるヒヤリハットを体験するリスクが約1・2〜2倍高いことが分かった。11月29日に建設会館(東京都中央区)で開かれた建設労務安全研究会(本多敦郎理事長(鹿島建設))の研修会で調査結果報告を行った建災防の本山謙治技術管理部長は「建設現場での労働災害を防止するためには、メンタルヘルス対策が不可欠だということが明らかになった」と強調した。
調査は、建災防が同研究会に委託し、2018年4月1〜30日までの1カ月間にわたって実施。全国の建設作業従事者1万8683人から有効回答を得た。建設労働者を対象に、ストレス反応(疲労感、不安感、抑うつ感)および不眠の程度と「ヒヤリハットの現出」との関連を検討することを目的として、大規模な横断調査を行ったのは日本国内では初めて。
今回の調査は建災防本部が集計・分析する一方、建災防の「平成30年度建設業におけるメンタルヘルス対策のあり方に関する検討委員会」の委員を務めている渡辺和弘氏(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野助教)に委嘱し、統計学的分析も合わせて行った。
その結果、ストレス反応が高い人・不眠症状のある人は、そうではない人と比較して、自らに原因のあるヒヤリハットを体験するリスクが約1・2〜2倍高かった。
また、原因を限定しない場合でもストレス反応が高い人は、ヒヤリハットを体験するリスクが約2・3倍高いことも明らかとなった。
渡辺氏は調査報告書に調査の統計学的意義と、ストレス・不眠の程度とヒヤリハット現出との相関についての考察を寄せ、「『建設労働者のヒヤリハット現出』については、不眠症状だけでなく、本人が自覚するストレス反応にも注目する必要がある。特に機械のオペレーターや自動車の運転を担う者にとっては不眠症状が重要な指標になる可能性がある」などと指摘。
その上で、今後さらなる検証が必要としながらも、「メンタルヘルス不調や不眠であることによって前頭前野の機能が低下し、結果としてヒヤリハットに関連する事象を引き起こす確率が高まる可能性がある」と分析。労働災害の発生を予防するためにはメンタルヘルス対策が必要との認識を示した。
提供:建通新聞社