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中央ニュース

2018/10/31

地域のインフラメンテナンス〜第4次産業革命の胎動〜(12)

第13回建設トップランナーフォーラム(12) 
第4部・パネルディスカッション―これからの地域のインフラメンテナンス(下)

■地域建設業が受注しやすい環境へ

 農林水産省農村振興局次長の室本隆司氏は、自然力による農地や農業水利施設の大規模被害に触れ、「ため池の決壊や被災から数日後の崩壊など、地域に多大な影響を与える災害が多い」と指摘。災害復旧は市町村による発注が多いため、「できるだけロットを大きくし、地域建設業が受注しやすい環境を整えつつある」とした。
12回
 中山間の水田整備でドローンやレーザースキャナ、ICT建機を活用して工期を2割短縮する事例や、農業分野でICTを活用して生産コストの4割カットを目指す大手メーカーの動きなども紹介。「建設業の人手が不足している中、ICTには非常に注目している」と強調した。農業分野へのチャレンジも呼び掛け、インフラの守り手として大きな役割を果たす産業として、経営改善にも努めてほしいと呼びかけた。

 膨大な土地改良施設の効率的な更新にも触れ、特に末端まで入れれば地球約10周分の長さにもなる用排水路のうち2〜3割が耐用年数を超え、今後10年でさらに4割がそうなると説明。「限られた予算で施設を更新するには、ストックマネジメントの考えを徹底する必要がある」と強調した。

 全国建設技術協会会長の大石久和氏は「地域そのもののメンテナンスが必要な時代」とする一方、的確に状況を把握できる自治体の技術職員が減っていると警鐘を鳴らした。「建設業の果たす役割はその分大きく、自治体との関係を深めることも必要だ」と述べた。

 その地域建設業を助けるのはIоTやIоSで、「地域レベルで取り組みを実施する必要性がある」と強調。あるキュウリ農家で後継を拒んでいた息子が、それまで親が手作業で行っていた選別作業をすべてデータ化して効率化させた事例を紹介し、「ITを理解できない企業は発展する余地がないと言ってもいい」と指摘。「請負業ではなく、市町村に提案して自分の手で切り開く時代だ」と話した。

 「失われた20年」についても触れ、「先進国で公共事業費を半減以下にしてきたのは日本だけ。雨の降り方がこの20年で厳しくなっているのに防災対策費を減らしているのは、愚かとしか言いようがない」と指摘。土木学会が南海トラフ地震で被災後20年間の経済活動損失も加味して試算した「1410兆円」という被害額についても説明しながら、「備えておく」ことの重要性を訴えた。

 最後に大石氏は日本の歴史を振り返り、「農業基盤整備の土木から定住や文明が生まれた。これは『人の力』がなくては絶対にできない」と強調し、「地域の建設業がそのことに誇りを持って健闘することを祈る」と結んだ。

 建設トップランナー倶楽部代表幹事の米田氏はフォーラムでの発表を踏まえ、「インフラメンテナンスとICT活用の息吹をあちこちで感じることができた」と話し、最新技術を駆使した社会基盤の保全や災害への対応など、これからの時代にますます重要な役割を担う地域建設業の可能性に期待を寄せた。=おわり=(地方建設専門紙の会)※登場者の肩書きは6月29日時点のものです。

提供:地方建設専門紙の会