第13回建設トップランナーフォーラム(9)
第3部・未来づくりとICT―森林整備における新たな取り組み
■いのちの途として林道守る
公共事業の減少に伴い、建設業の果たす役割も大きく変わった。新しいものを造ることから、地域のインフラメンテナンスや地域防災の担い手としての役割も重視されるようになってきた。山善(神奈川県)の山本善一社長は、神奈川県森林土木建設業協会が行っている新たな取り組みを紹介した。
横浜や湘南のイメージが強い神奈川県だが、県土の40%は森林が占めている。神奈川県森林土木建設業協会は、1963年の設立以来、着実に活動を続けてきたが、仕事量の減少に伴い会員数が激減。協会の運営が懸念されるようになった中で会長職に就いた山本氏は、東北地方太平洋地震での出来事が印象に残っていると振り返った。宮城県の山間部で県道が崩壊し孤立した集落は、山を通る林道が生命線となり何人もの人が助かった。
神奈川県にも多くの県営林道がある。一般社団法人として何ができるかを会員が検討し、神奈川県知事と2012年3月30日に県営林道等災害防止支援活動に関する協定を締結。その後、神奈川県で災害協定締結業者を対象とした「いのち貢献度指名競争入札」が試行されたことを受け、より一歩進んだ災害協定を締結するため、県民へ林道のPR活動を行った。
具体的には、森林を題材にした写真コンクールの開催、林道の重要性に関する講演会の開催、森林の大切さをPRする広報誌の発刊に取り組んだ。そして今一番力を入れているのが林道のパトロールだ。協会の会員がボランティア活動の一環として林道巡回パトロールを実施し、損傷箇所を報告する。報告を受けた県は、緊急性のある個所は早急に対処している。山本氏は「林道のメンテナンスをしっかりやることによって、いざという時のいのちの途(みち)になる」とパトロールの意義を強調した。
地域の建設業の今後について山本氏は「公共投資が少なくなり、私たち地域の中小業者、特に公共土木をメーンとしている企業の存在が危ぶまれている」と危機感を示し、「しかし地域のインフラを守るという意味で、地域の中小企業は無くてはならない存在。働き方改革が進む中、建設業は大きく変わらなくてはならない。それらのことを発注者の責任にするのではなく、今何をしなければならないかを考え行動に移さなければならない」と訴えた。
神奈川県建設業協会で副会長(建設みらい委員会担当)を務める山本氏は「いつも若い経営者に対して、どうすればできるかを真剣に議論し行動してほしい。現在の殻を破り、一歩でも前へ、一段でも上へ、地域社会のために頑張っていける建設業者になってほしいと言っている」と話した。(地方建設専門紙の会)
提供:地方建設専門紙の会