国土交通省は、自然災害による鉄道施設の被害が増加していることを受け、防災・減災対策の強化を検討する。特定鉄道施設に係る耐震補強に関する省令(耐震省令)の指導対象となる路線や施設(河川橋梁など)を追加することに加え、鉄道事業者が所有しない土地からの土砂崩れについて、速やかな復旧工事の着手、再度災害防止のための支援策などを検討する。
全国の鉄道施設における過去10年間の災害被害総額は1133億円(地震187億円、豪雨988億円など)。地震、豪雨は被害額が大きいだけでなく、復旧に長期間を要することも課題。熊本地震で被災した南阿蘇鉄道第一白川橋梁は、復旧までに約4年を要する見通しだ。
今夏の大阪北部地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震など、災害リスクが増加している現状も踏まえ、鉄道の防災・減災対策を強化する。
耐震省令では、首都直下地震・南海トラフ地震で震度6強以上が想定される地域で▽利用者数1日1万人以上の駅・高架橋の耐震補強▽緊急輸送道路や津波避難路と交差・並走する高架橋の耐震補強▽橋梁の落橋防止対策―を行うよう、鉄道事業者を指導している。
既に高架橋は97%、駅舎は94%の耐震化率を確保しており、現在は指導対象となっていない路線、河川橋梁などを指導対象に追加することを検討する。
また、近年の地震・豪雨では、鉄道施設に隣接する斜面からの土砂流入が頻発している。鉄道事業者が保有する斜面では、事業者が法面補強や落石防護などの対策を実施。鉄道事業者以外が所有する斜面防災事業に対する補助制度は、JR北海道、JR四国、JR九州のみに対象が限られており、他の鉄道事業者への拡大を検討。落石対策などを土地所有者に義務付ける「沿道規制」なども合わせて検討する。
提供:建通新聞社