日本の労働市場で人材不足が深刻化し、外国人の受け入れを政府が拡大しようとしている中、全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)は、外国人の受け入れに対する基本的スタンスを固めた。建設業でも外国人就労者が「重要な戦力になっている」との認識を示す一方、賃金の低下など「国内での人材確保・処遇改善・働き方改革に悪影響があってはならない」と指摘。報酬確認などの「制度的担保がなされていることが必要」と強調した。
外国人労働者の受け入れ拡大は、政府が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針)に盛り込まれた。即戦力になる外国人に就労目的の在留資格を与え、最長5年の就労を認める。高い専門性や技能を持つ外国人には家族の帯同を認め、在留期間の上限なく滞在できるようにする。秋の臨時国会で入管法を改正し、2019年4月から施行する方向だ。
こういった動きに対して全建は、都道府県協会の意見を集約し、労働委員会で『建設分野における外国人材受け入れに関する全建の基本的スタンス』を策定。9月21日に開いた理事会に報告した。
基本的スタンスでは現状について「技能実習生、外国人建設労働者の数も増加傾向にあり、重要な戦力になっていることも事実」との認識を示し、「全建としても、きちんとした制度の下、現実的なニーズに応えていく立場で外国人材受け入れに臨むことが必要」とした。
政府の取り組みについては、「建設業界の処遇改善に向けた努力に逆行しないものであれば、受け入れ拡大に一概に反対すべきものではない」と考えを示した。
一方、課題として「政府案では、日本人と同等以上の報酬の確保などを確認するとしているが、その確認方法が、国や公正な第三者による確認作業がきちんと実行できるものになっていることや、安全衛生、雇用管理についても制度的担保がなされていることが必要」と指摘した。
技能実習生制度に関しては、これまで「マイナス事案が報道されるケースがあった。今後の外国人材受け入れ案件で業界のイメージダウンになるような報道があれば、国内人材の確保に取り返しのつかないことにもなりかねない」と懸念を表明。「技能実習を含めきちんと制度を構築するとともに、適切な運用を行う必要がある」と提言している。
提供:建通新聞社