国土交通省交通政策審議会気象分科会(分科会長、新野宏・東京大学大気海洋研究所客員教授)は、「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方〜災害が激甚化する国土、変革する社会において国民とともに前進する気象業務〜」と題する提言をまとめた。少子高齢化をはじめとする社会環境の変化が顕在化する一方で、自然災害が激甚化しているわが国の現状を指摘。一方で、さまざまな分野でICT(情報通信技術)を活用する「Society5.0超スマート社会」の実現が提唱されている社会的・経済的要請についても記述し、「観測・予測精度の向上に係る技術開発」と「気象情報・データの利活用の促進」―の二つの相乗効果によって防災や日常生活、経済活動に資する気象業務を推進する、とした気象業務の方向性を示した。
「観測・予測精度の向上に係る技術開発」のうち、気象・気候の目指すべき水準(目標)として、「現在の気象状況から100年先まで、社会ニーズに応じた観測・予測の高精度化」を掲げた。
地震・津波・火山についても予測技術の現状を踏まえ、現象の把握・評価、発生後の今後の見通しなどの高精度化を目指していくとした。
他方、「気象情報・データの利活用の促進」については、国民が日常の生活や経済活動の基盤情報として容易に取得・利活用できる環境整備に向け、気象情報・データへのアクセス性向上や関係制度の見直し、さらに防災と生活のためのリテラシー向上などに取り組むとの考えを示した。
その上で、社会におけるさまざまなビッグデータと組み合わせて活用するなど、国民共有の財産として円滑な流通を促進する必要性を強調。
AI(人工知能)などのICTを活用した技術革新に必要な現行制度の見直し・規制緩和も並行して進め、国民が容易かつ的確に気象情報やデータを取得・利活用できる環境づくりにつなげるとした、30年を見据えた気象業務の方向性を示した。
提供:建通新聞社