総務省は、2020年の5G(第5世代移動通信システム)の社会実装を見据え、ICTインフラを地域で整備、普及させるための新たな戦略の策定に向けた報告書をまとめた。現在、スマートフォンや携帯電話などで使われている高速モバイル通信技術LTEや、一般の公衆電話回線を使ったADSLなどで構成される既存のICTインフラでは、速度や安定性などの面で大容量通信やリアルタイム伝送は困難になると指摘。5Gや光ファイバーをはじめとした高度なICTインフラを整備し、地域の課題に対するICTソリューションを高度化させる必要性を強調した。5Gや光ファイバー、IoTやAIなどのICTインフラ整備と利活用によってもたらされる主な経済・社会的効果が30年時点で合計約73兆円に達する、との試算も示した。
報告書は、ICTインフラ地域展開戦略の基本的な考え方に基づき、国・自治体・民間事業者がそれぞれの立場から、5GをはじめとしたICTインフラの整備を加速する重要性を強調。整備主体については、民間事業者による整備・運営を基本としつつ、不採算地域については国や自治体の公的支援の必要性を指摘した。
その一方で、民間事業者に対しては、利用者視点でニーズやコストパフォーマンスを考慮した整備の推進を促し、自治体に対しては、地域特性を考慮し、不採算地域におけるICTインフラの整備計画を策定するよう求めた。
他方、国に対しては目標とする5Gの20年社会実装の実現までに全国の10カ所以上で課題解決モデル実証を実施し、その成果を全国に水平展開するとともに、セキュリティや個人情報、倫理的な課題などを抽出するよう要請。
さらに、ICTインフラ整備のためのミニマムスタンダードの策定なども主導し、地方におけるSociety5.0実現のための環境整備と、5Gの速やかな地域への普及・展開による「新しい地方創生の実現」につなげるよう注文した。
同省は「ICTインフラ地域展開戦略検討会」(座長、岡素之住友商事名誉顧問)を設置。18年1月から人口構造の変化やICT利活用の高度化などの現状を踏まえ、5Gの20年の実用化も見据えた地域におけるICTインフラの普及促進戦略を検討していた。
提供:建通新聞社