国土交通省が8月6日に開いた中央建設業審議会総会では、建設業の働き方改革の柱となる「適正な工期設定」に対してさまざまな意見が上がった。学習院大学の櫻井敬子教授は、『著しく短い工期』での契約の建設業法による禁止について「基準を明確にすべき。どこからがアウトが明確に読み取れるようにした方がいい」と指摘。日本建設業連合会の宮本洋一副会長は「適正な工期とは何か、第三者が判断する場を設けてもいい」と発言した。
建設業に時間外労働の上限規制が適用されることを受け、国交省は建設業法で受発注者に適正な工期設定を求め、著しく短い工期で契約した発注者を勧告する制度を創設する。中建審が適正な工期設定の判断基準を作成し、その実施を受発注者に勧告する仕組みもつくる。
櫻井教授は、著しく短い工期で契約した発注者に対する勧告制度について「大企業や公共事業であればいいが、それ以外の発注者に対する有効性には限度がある」と指摘。ただ、「罰則にするのは一足飛びで執行体制がついていかない」との見解を示した上で「勧告だけでない別のツールが必要だ」と主張した。
日建連の宮本副会長は「工期設定については総合建設業にかなり責任がある」と前置きし、「環境が厳しくなるとどうしても価格でダンピングし、それが極限までくると工期を短くし、自らの首を絞めてきた」とこれまでの経緯を振り返った。
その上で、建築工事の標準工期を算定できる、日建連の『適正工期算定プログラム』の重要性を訴え「(プログラムが)誰もが納得できる工期を示すツールになればいい」と続けた。
三菱地所の谷澤淳一副社長は、民間発注者として建設業の働き方改革の重要性を認めた上で「発注者と建設業界がウィンウィンにならないといけない」と強調。一方で「行き過ぎた重層下請け、社会保険の問題もあるので、働き方改革と並行してそれらにも取り組んでほしい」と注文した。
全国建設労働組合総連合の勝野圭司書記長は「週休2日が進む中で、稼働日、稼働時間の減少が現場労働者の減収としてしわ寄せされないよう、実効性ある策を講じるべきだ」と訴えた。
提供:建通新聞社