6月に成立した働き方改革関連法では、時間外労働の割増賃金率について、中小企業に対する猶予措置を廃止することが決まった。2023年4月以降、月60時間を超える時間外労働に対しては、現在25%以上の割増賃金率を50%以上に引き上げることを義務付ける。中小建設業も、翌24年4月に施行される時間外労働の罰則付き上限規制とともに、割増賃金の引き上げに対応する必要がある。
時間外労働の割増賃金率は、2010年4月施行の改正労働基準法で、1カ月60時間を超える分が、それまでの25%から50%に引き上げられた。ただ、中小企業に対しては、当面の間、適用を猶予するとされており、現在も法定の割増賃金率は25%のままだ。
働き方改革関連法は、中小企業に対する割増賃金率の猶予を廃止し、23年4月から中小企業にも割増賃金率を50%以上に引き上げることを求める。当初は、22年4月の施行を予定していたが、与党意見を踏まえて23年4月に施行をずらした。
中小建設業も、翌24年4月に時間外労働に罰則付きの上限規制が適用されることと合わせ、割増賃金でも対応を迫られる。時間外労働は「月45時間、年360時間」を上限とすることが原則だが、労使で特別条項付きの三六協定を結べば「年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間」を限度に設定できる。
三六協定を結んだ企業は、従業員の時間外労働が「月45時間、年360時間」を超え、さらに月60時間を超えると、割増賃金率を50%以上にする必要がある。三六協定に事前に月60時間以上の時間外労働の割増賃金率を50%以上とすることを記載し、実際に法定の割増賃金を支払うことが求められる。
また、10年4月の割増賃金率の引き上げに合わせ、労働基準法では、月60時間以上の時間外労働を行った従業員に割増賃金に代えて有給休暇を与える「代替休暇」の仕組みも導入された。割増賃金率の引き上げが見送られていた中小企業も、23年4月以降はこの制度を活用できるようになる。
提供:建通新聞社