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2018/07/10

連載「どう生かす 建設キャリアアップシステム」第8回

■第8回 技能者の労働価値を評価する
 大和ハウス工業技術本部 和田彰彦技術部長
 
 大和ハウス工業は今年4月、2021年4月までに全ての現場を原則週休2日(4週8休)に移行させる方針を打ち出した。このタイミングで、同社は建設キャリアアップシステムにも事業者登録した。同社の協力会社は約6000社、現場従事する技能者は6万人に上る。「週休2日と建設キャリアアップシステムは現場の労働環境を整える車の両輪≠ノなる」と話す同社技術本部の和田彰彦技術部長にその言葉の真意を聞いた。大和ハウス工業・和田部長(掲載候補)_1

―なぜシステムに事業者登録したのですか。
 「少子高齢化が進み、技能者数が先細りするという恐怖感≠われわれも長く感じてきた。システムの前身である『就労履歴登録機構』の時代からこの動きに参画していたのもそうした問題意識があったからだ。労働力不足がさらに顕在化した後では手遅れになると判断した」

―システムの稼働に向け、協力会社を含めた体制をどう構築していきますか。
 「2019年4月以降に着工する現場から本格運用のスタートを切りたい。7月からは協力会社向けの説明会も始めた。協力会社と協力会社が雇用する技能者にシステム登録の意義やメリットを丁寧に説明する」
 「わが社では、戸建て住宅、集合住宅、商業施設に加え、年間約5万件に上るリフォーム事業もある。これだけ大小さまざまな現場を持つ企業は国内でもわが社だけだろう。システムの制度は現場の大小で変わらないが、運用は大きく異なる。10月からは現場での実証も行い、課題を一つずつ解消していきたい」

―システムを活用することで現場をどのように変えようと考えているのでしょうか。
 「鉄骨造、プレハブ造が主流のわが社の現場は、ゼネコン各社に比べ工期が短い特徴があるため、技能者は休暇を取得しにくく、1日の労働時間も長い傾向にある」
 「このため、今年4月1日以降に着工した物件から、現場に4週5休を導入した。1年ずつ段階的に休暇を増やし、4年後の完全週休2日(4週8休)実現を目指していく。技能者の賃金水準を保ったままで、休暇取得を増やすには、元請け・協力会社間でより正確に就労状況を把握することが前提になる。そのための第一歩となるのがシステムの活用だ」
 「ただ、プロトタイプのシステムは技能者の入場管理しかできない。われわれは、システムを背骨として独自に退場管理を導入し、技能者の労働時間を履歴として追いかけるようにする」

―システムのメリットを自ら肉付けしようということでしょうか。
 「労働時間だけでなく、技能者の保有資格も、公的な資格だけでなく、わが社独自の技能者資格を登録できるようにし、データベース化する。高いレベルの技能者に対する助成金の支払いにもシステムを活用する。わが社での就労実態をシステムで把握できれば、労務費を上乗せする際の事務作業を効率化し、精度を高めることもできる」
 「やみくもな報酬の支払いは現実的ではなく、システムに蓄積したデータを使い、報酬を支払う理由と正当性を裏付ける。建設業には技能者の労働価値を評価する土壌がない。そこを変えなければ、他産業との労働力の争奪戦に勝ち抜くことはできない」

―技能者の処遇改善に必要な原資はどのように生み出すのでしょうか。
 「個人消費者に負担をお願いするのはまず不可能。自社で負担する原資を吸収するため、現場の生産性向上に心血を注いでいる。社内の建設生産システムを再構築するためにも、ロボットやBIMの本格導入と同様に、建設キャリアアップシステムを有効に活用したい」