中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会が6月18日に開かれ「長時間労働の是正」「処遇改善」「生産性向上」「地域建設業の持続性確保」を柱とする中間報告が大筋で固まった。国土交通省は、6月中に最終決定するこの提言を踏まえ、建設業法改正に向けた施策の具体化を目指す。法改正により、現行の建設業法にない「工期」の概念を取り入れ、受発注者双方に長時間労働を排除した工期設定を求める法制度を整備する他、1971年に登録制度から移行した建設業許可制度を初めて抜本的に見直す。
建設産業政策会議が昨年7月にまとめた『建設産業政策2017+10』を受け、許可制度や技術者制度など、法制度面で対応が必要な基本的な枠組みの見直しを提言した。
開会中の通常国会での成立が濃厚な働き方改革関連法案では、建設業に5年の猶予期間を経て時間外労働の上限規制が適用される。中間報告案では、長時間労働に対する規制の強化を見据え、建設業法においても受発注者が適正工期を設定するための対応を求めた。
具体的には、中央建設業審議会が「工期に関する基準」を作成し、受発注者にこの基準に沿った適正工期の設定を勧告。この基準を前提に、適正工期を設定する受注者の責務を規定し、受注者側からの『工期ダンピング』を禁止する。注文者(発注者、元請け、上位下請け)による不当に短い工期の強要を禁止する規定も追加し、この規定に違反した注文者に対する勧告制度も整える。
建設業許可要件に社会保険加入を追加し、未加入の許可業者の許可・更新を認めない仕組みを構築する。未加入の許可業者が許可の不要な500万円未満の工事の受注に流れないよう、現場入場制限の徹底、施工体系図による未加入企業の見える化なども検討する。
許可要件化に伴い、法定福利費が下請け企業に行き渡るよう、下請け代金に含まれる労務費相当分を現金払いとすることを建設業法で明文化する。許可要件の一つとされている「経営業務管理責任者」は、廃止を含めて制度の見直しを検討する。
建設業法に記載のない、技能者の法令上の位置付けを明確にし、技能・経験に優れた技能者、技能者を育成・雇用する専門工事企業が選ばれやすい制度を構築する。建設キャリアアップシステムを活用した技能者の能力評価制度を活用し、注文者が配置する技能者の技能レベル(4段階)を指定できる制度をつくる。
技術者制度の見直しにより、現場の生産性を高める必要性も提言。同業種で最上位の下請けに主任技術者を配置すれば、下位下請けの主任技術者の配置を不要にする「専門工事共同施工制度(仮称)」を創設する。専任を求めている元請け企業の監理技術者についても、「監理技術者補佐(仮称)」を配置すれば複数現場の兼務を認める緩和措置を検討する。
提供:建通新聞社