全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)は、4週8休など民間工事での働き方改革の推進に向け、「鉄道」「電力」「ガス」「住宅・不動産」の4分野について、適正工期確保の課題などを会員企業に調査した。その結果、各分野に共通する4大課題として@労務単価・経費の引き上げA完成月の平準化B書類の簡素化C発注者側の事由による工期の遅延―が明らかになった。全建では、決算などの関係で年度末に完成時期が集中するなど、平準化を巡り公共工事と同様の課題があることなどにも注目している。
調査は、各都道府県協会を通じて3月に意見照会を行い、4月に67社から回答を得た。鉄道について13社、電力について4社、ガスについて4社、住宅・不動産について43社が回答。分野を特定しない意見が12社からあった。
各分野に共通する課題のうち「労務単価・経費の引き上げ」については43社が必要だとした。また21社が「発注者から要求される書類の簡素化」を求めている。
「工期が遅延する発注者側の事由」の課題を指摘したのは19社。このうち8社は「関係諸機関との未協議、未調整もしくは不十分な状態で工事着手が遅れる」と指摘した。さらに11社が「概略発注、度重なる設計変更、設計図書不十分が工期を圧迫している」と問題視した。
平準化に関しては、26社が「完成月が年度末に集中する傾向があるため、休めない工程を組まざるを得ない」とした。このうち7社が、公的補助金などによる工期の制約を指摘。「補助金も繰越しできるように改革してほしい」と回答した。
民間工事でも公共工事と同様、労務単価・経費の引き上げ、工期の平準化、書類の簡素化が問題であることが判明した。
民間発注者への要望では、「4週8休を前提とした工期設定」を39社が求めている。
住宅・不動産の分野では「発注者の設定する工期や、契約締結後の工期の前倒し要求などに問題がある」と11社が回答。特に新築工事では「販売時期や供用開始時期が決められ工期が短くなるなど、受注者の都合で工期を変えることができない」として、7社が「余裕ある工期」を求めている。また人材確保について9社が「技術者や技能者の不足」を訴えた。
鉄道工事では、業務の特徴として6社が「関係諸機関などとの調整に膨大な労力と時間がかかる」と指摘した。また改良工事に関して5社が「最終列車後の深夜や早朝に線路閉鎖・き電停止を伴う工事」について「余裕のある工期が必要」としている。
電力工事では、発電施設の新設で「土木建築工事に工期短縮のしわ寄せがくる」と3社が指摘した。また、定期検査などに関して「休止期間が定められている中で、期間を設定される作業が多い」という声もあった。
ガス工事では、休日出勤について3社が「繁忙期の作業員不足や、天候などによる作業不能日がある場合などに増加する」と回答した。また、他の地下埋設物などと輻輳(ふくそう)する作業で、「タイトな工程管理になる」という指摘があった。
全建では、今回の調査結果を国土交通省での受発注者の連絡会議の場などで伝えていく。
提供:建通新聞社