国土交通省は、下請けへの対価の減少や労務費へのしわ寄せを生む、過度な重層下請け構造を改善するため、下請け次数の削減方策を検討する。下請けの主任技術者の配置要件を緩和する「下請共同施工制度(仮称)」に加え、発注工事の受注者の下請け次数を制限している地方自治体の取り組みも参考に、行き過ぎた重層化を回避する施策を検討する。
国交省が2016年度に行った調査では、下請け次数が3次までで完結する工事は施工体系図上で全体の86%を占めたが、住宅、倉庫・物流施設、教育・研究・文化施設で4次・5次下請けのいる工事を確認している。
重層下請け構造は、専門性の高い工種に対応するため必然的に生まれる側面があるが、重層化が行き過ぎると施工の役割が不明確になったり、品質や安全性の低下につながる懸念もある。国交省の別の調査では、下請け次数が高い企業ほど、賃金の引き上げ、社会保険加入、法定福利費の確保が進んでいない実態も明らかになっている。
国交省は、中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会で検討している建設業法改正で「下請共同施工制度(仮称)」を創設する方針。同制度では、上位下請けの主任技術者が下位下請けの主任技術者の業務範囲をカバーすることで、下位下請けの主任技術者の配置要件を緩和する。繁忙期の労務提供を円滑にし、重層化を回避する効果が期待される。
一方、一部の都道府県では、発注段階で下請け次数を制限する動きも以前からある。福井県、京都府、鳥取県では、建築工事で3次、建築以外の工事で2次以内の制限を元請けに求めており、制限以上の契約が判明した場合、指名停止などのペナルティーも設けている。
国交省は、都道府県の事例も参考に下請け次数削減策を検討する。このうち民間工事では、施工体制台帳や施工体系図を活用した重層下請け構造の「見える化」を図る。公共工事と同様、施工体系図を公衆の見やすい場所に掲示することを求めることも検討している。
提供:建通新聞社