自由民主党建築設計議員連盟(港区)は5日に総会を開き、建築3会(日本建築士事務所協会連合会、日本建築士会連合会、日本建築家協会)から建築士の受験資格の変更、業務領域の拡張など、建築士資格制度や運用方法の改善に関する共同提案があったことを明らかにした。若手の確保・育成を目指し、提案では、実務経験がなくとも建築士試験の受験を可能とし、合格後の実務経験の申請により建築士登録を行うことができるような制度改正を要望した。この他、要件となる実務経験の範囲の拡大に加え、建築士が関与すべき業務の明確化などを盛り込んだ。
建築3会を代表し、日本建築士事務所協会連合会の佐野吉彦会長は資格制度改正の意義について「建築設計業界で課題となっているのが資格者の高齢化。若い世代には早めに専門的な技能を身につけてもらう必要がある。時代に即した制度改正が重要だ」と説明。併せて「資格者が業務領域を広げることは地域のまちづくりにとって有益である」と語り、建築物の質の確保における意義にも触れた。
提案によると、建築設計業界の課題として、一級建築士約14万人のうち、50歳以上が6割以上を占めており高齢化が進んでいる一方、一級建築士の学科試験の受験者数は2007年から16年までの10年間で約4割減少していることを挙げた。受験者の増加が望まれているものの、受験資格要件として一定の実務経験が設定されているため就業後に受験しなければならず、業務と受験勉強の両立が困難で、受験を断念するケースがあるという。
具体的には、受験資格の変更については▽受験時の資格要件にある実務経験を登録時の要件とすること▽実務経験の範囲を基本計画作成や既存建築物の調査・検査・維持保全、大学・工業高校などでの専門教育、官公庁などにおける建築行政まで拡大▽学科試験の合格者が柔軟に製図試験を受けることが可能な制度変更▽CADによる試験の導入―を要望。
業務領域の拡大では▽小規模であっても建築物の安全上重要な改修に関わる設計・工事監理、耐震診断などについて建築士が行うような運用改善▽個々の業務で資質を確保するための定期講習の充実―を盛り込んだ。
佐野会長は総会終了後、「建築士資格制度の改正については議員の方々にも一定の理解をいただいたと思う。早ければ19年の通常国会で議論されるだろう」と展望を述べた。
提供:建通新聞社