近藤晴貞会長に聞く 地域建設業の展望
全国建設業協会が設立70周年
全国建設業協会(全建)が設立70周年を迎えた。70年の節目に合わせ、近藤晴貞会長に、地域建設業が直面している課題や今後の活動の展開などについて聞いた。
―これまでの70年で建設業を取り巻く環境は大きく変化してきた。
「昭和50年代の建設冬の時代、平成に入ってのバブル崩壊、さらに“コンクリートから人へ”のキャッチフレーズの席巻と公共事業の大幅削減など、建設業にとって厳しい時代があった。ようやく今は、公共工事設計労務単価が6年連続で引き上げられるなど、環境に改善の兆しが見えてきている」
「一方、建設業界は現在、大きな転換点に立っている。地域建設業がその役割を果たしていくためにも、担い手の確保、そのための働き方改革、生産性向上に向け、地域建設業は果敢にチャレンジしなければならない」
―全建は、設立70周年を機に地域建設業の今後の経営の羅針盤となる『地域建設業将来展望』をまとめた。策定の背景と狙いを聞きたい。
「生産年齢人口が減少する中で、産業間では既に熾烈(しれつ)な人材獲得競争が始まっている。建設業就業者の高齢化の危機的な進行状況を見た時、働き方改革を進め、明日の建設業の担い手を確保していくことは、地域建設業が生き残るための絶対的な条件になっている」
「また、IoT(モノのインターネット)などの技術の発達がもたらす第4次産業革命のうねりは地域建設業に対しても大転換を迫るものであり、全ての建設生産プロセスでICT(情報通信技術)などを賢く活用し、生産性を高めていくことが求められている」
「こうした大きな時代の変化の中で、地域建設業が生き残り、地場で活躍し続けるためには、強固な経営基盤の確立が必要だ。そのための環境を整備していくための方策を将来展望として示した。多くの人に読んでもらい、意見を寄せてほしい」
―これから全建はどんな役割を果たすべきか。
「まず、政府・政界・経済界・マスコミ・学会などとのパイプを太く強いものとすることで、発言力・発信力を強固にし、都道府県の建設業協会単独では難しい重要テーマへの対応に取り組む。特に、地域間や企業間の格差や、発注機関の入札・契約、地域建設業を取り巻く全国的な状況を把握し、データに基づく、効果的かつ説得力のある活動を展開していく必要がある。地域建設業の魅力ある姿や社会資本整備の必要の積極的な広報も重要だ」
―2018年度の重点施策について聞きたい。
「17年度補正予算で1兆円余りの公共事業関係費が計上され、18年度当初予算では約6兆円が確保された。しかし、今後の事業の執行状況や経済動向次第で景気の腰折れも生じかねない。18年度の追加的な予算措置を臨機応変に要望していく方針だ」
「懸案である働き方改革では、これまでに全建として決めた『休日月イチプラス運動』『設計労務単価引き上げ分アップ宣言』『社会保険加入企業との契約徹底』―などの運動を会員企業の協力を得てしっかり進めたい」
―建設キャリアアップシステムが今秋から稼働する。
「技能者の保有資格や社会保険加入状況などと就業実績を蓄積し、処遇の改善や技能の研さんにつなげる基本的なインフラとして期待している。元請けとしても、システムを利用する中で書類作成を簡略化し、社会保険加入確認が簡単になるなど、メリットを実感できるようになればいい。いろいろ心配なことがあるのも事実だが、運用開始後の状況を見ながら、必要な改善を加えていけば良いのではないか」
提供:建通新聞社