トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2018/05/29

連載「どう生かす 建設キャリアアップシステム」第3回

■第3回 処遇の過程、結果を見える化
 建設業振興基金 内田俊一理事長

 建設キャリアアップシステムの運営を担うのは、1975年の設立以来、地域の建設業や専門工事業とともに歩んできた建設業振興基金だ。内田俊一理事長は「培った経験やネットワーク力を注ぎ込み、建設業で働く人たちにとって真に役立つ仕組みに育てたい」と意気込む。事業者・技能者の登録がスタートし、秋の運用開始も迫ってきた。内田理事長にシステム開発の状況や今後の建設業界がシステムをどう生かすべきかを聞いた。
建設業振興基金・内田理事長(キャリアアップ連載)_1

−地域の建設業や建設技能者の現状をどう見ていますか。
 「建設技能者はそれぞれが建設生産の一翼を担う高いスキルを持った専門家で、誇りの持てる仕事だ。一方で建設業に入職した高校生の2人に1人が3年で辞めてしまうというデータがある」
 「若手が定着しなければ、現場を支える専門家集団が継続できなくなる。また、若者の目に『建設業は一生を託せる産業ではない』と映ってしまう懸念もある。今、建設業の実態もイメージも崩れつつあるのではないか。建設産業の基盤が揺らいでいる」

−入職・定着には何が必要でしょう。
 「きちんと人を育てる決意を持ち、実践する姿を見えるようにすること。若年層が就職先を選択する理由のトップは『長く勤められる会社』だという。若者の多くは、誇りを持って働き、人からも認められたい。建設業はこの思いに応えられる産業にならなければならない」

−建設キャリアアップシステムは、その一つツールということですね。
 「担い手確保には、教育訓練の仕組みをつくり、成果を処遇に反映させ、その過程や結果を見える化することが大切。私たち基金としても『建設産業担い手確保・育成コンソーシアム』や『建設労働者緊急育成支援事業』を通じて教育訓練の支援に取り組み、一定の成果を上げてきたと考えているが、今後は、能力に見合った処遇を実現しなければならない。そのためには、身に付いたスキルを第三者にも見える形にする必要があり、そのインフラが『建設キャリアアップシステム』だ」

−準備状況は。
 「郵送受付がスタートし、間もなくインターネットや地方窓口での受付など全国で登録できる体制をつくる。秋には運用開始し、現場情報の登録や就業履歴の蓄積が始まる」
 「技能者登録の初年度の目標は100万人。ただ、せっかく技能者が登録し建設キャリアアップカードを手に入れても、現場情報の登録がなければ、技能者の経歴に穴があいてしまう。まずは事業者登録や現場情報登録のスタートダッシュに注力したい」

−システムの情報を生かす検討も始まっています。
 「蓄積した情報を企業評価に利用する仕組みを国土交通省が考えている。高いスキルを持った技能者を育て、高い給料を支払う。そんな会社こそが適正な利益を獲得できる。そうした仕組みづくりを期待したい」
 「建設会社の皆さんには、この状況をチャンスと捉えてほしい。技能者の能力を高め、企業評価を上げれば、人も集まり、稼げる会社になれる。基金も全力でそんな会社を応援したい。必要な措置はきちんと発注者に要望していけばいい」
 「また、システムに蓄積した情報は、現在検討されている使い方以外にも利活用できると考えている。皆さんからも『こんな使い方ができるのでは』と提案してほしい。業界の声が反映できるようになれば、建設キャリアアップシステムは、さらに役立つ仕組みに育っていくはずだ」

提供:建通新聞社