国土交通省は、建設業法改正の柱の一つである建設業許可要件の見直しで「経営業務管理責任者(経管)」の廃止を検討している。対象業種で5年以上の経験のある者を常勤役員に置くことを義務付ける現行制度が、若手後継者に経営を引き継ぐ上での障壁になっていると判断した。経管で担保していた許可業者の経営の安定性、労務管理能力は、許可要件に社会保険加入を追加することで補う。
経管は、建設工事の消費者保護、許可業者の財務管理能力や労務管理能力の担保、不良不適格業者の排除を目的として、1971年に導入されている。許可の対象業種で取締役や支店長・営業所長などとして5年以上(対象業種以外では6年以上)の経験があることが、経管として配置する者の要件となってる。その上で、この要件を満たす者を常勤役員などとすることが建設業許可の要件となっている。
ただ、経管には、新規参入や企業再編の弊害になっているとして、制度の見直しを求める声が以前からある他、経営層の高齢化が進んだために若手経営層への事業承継を阻害する恐れもある。許可行政庁、許可申請者にとって、5年以上の経験を証明する書類の作成・確認作業が負担になっているとの指摘もある。
制度導入後、経営事項審査、住宅瑕疵(かし)保証制度、公共工事における一括下請けの全面禁止など、建設業に関連する制度は充実。このため、許可業者の経営者の経験年数を問わなくても、許可業者の経営をチェックできる体制は整っている。
さらに、社会保険加入を許可要件に追加すれば、許可業者の適正な財務管理能力と労務管理能力を担保することにもなるとの期待もある。国交省は、経管の廃止に伴って、適正な経営業務を実施するための社内体制の整備、経営管理の担当者の届け出などの代替措置を設けることも含めて現行の許可要件としての経管の廃止の是非を検討し、建設業法改正案に結論を盛り込む方針だ。
提供:建通新聞社