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2018/04/25

安全・安心な職場づくりも目的だ(建通新聞社・建滴)

建設業の労働安全衛生 安全・安心な職場づくりも目的だ

 建設業における労働安全衛生の「定義」が変わろうとしている。それも国内外の社会・産業構造の変化やパラダイムシフトを反映した、大きな変化だ。
 その証左であり、象徴ともいえる「安全衛生」への取り組みに対する価値観の変化を、建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)が18年10月から運用を開始しようとしている建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)の「NEW COHSMS(ニュー・コスモス)」から読み取ることができる。
 ニュー・コスモスの最大の特徴は、何といっても建設業の労働安全衛生マネジメントの目的に、これまでの「労働災害を防止する」ことだけにとどまらず、「安全、安心な職場環境をつくる」という“新しい価値の創造”を加えたことだ。
 いくつかの改訂の柱の中でもニュー・コスモスの「性格」を決定付け、建設業がこれから目指すべき労働安全衛生の姿を端的に示していると思われるものが二つある。
 特筆すべきは、労働安全衛生マネジメントの国際規格であるISO45001が「労働者」の定義をトップマネジメントを含めた「worker」としていることと整合させ、新たに「建設工事従事者」という概念を定義したことだ。
 これまで労働災害から保護すべき対象とはしていなかった「一人親方等」や技能実習生を「建設工事従事者」として保護対象に加え、建設生産システムにおける労働安全衛生のステークホルダー(利害関係者)に位置付けた意義は大きい。
 もう一つは、リスクの範囲を拡大したことだ。時として労働災害が第三者を被害者にしてしまう公衆災害にもなることや、墜落・転落などの三大労働災害と並ぶ労働災害でありながら、ともすれば交通事故と同じとするような見方さえあった交通労働災害にも着目。これらを経営リスクとして捉えた意味も決して小さくはない。
 ニュー・コスモスの基本的事項には、建設現場におけるメンタルヘルス対策の推進(ストレスチェックと健康診断の実施)を追加したし、労働安全衛生法(安衛法)を改正して義務化された化学物質のリスクアセスメントについても追加している。
 15年には「過労死等防止対策推進法」が施行され、ストレスチェック制度が義務化されたが、あれからわずか3年の間に建設業には働き方改革のうねりが押し寄せている。長時間労働の是正はもとより、これまで以上に働く人の健康障害防止に向けた雇用者らの主体的な取り組みが求められるようになっている。
 「建設現場におけるメンタルヘルス対策」を明記した建設職人基本法(17年3月施行)の基本計画もそうだが、18年4月からスタートした「第13次労働災害防止計画」を見ても、現代社会で働く人々と組織を取り巻く環境変化が労働安全衛生マネジメントを多様化・高度化させていることは間違いないところだ。
 いかに社会の環境変化に適合したコスモスを構築しようとも、それを運用する人・組織が旧態のままでは意味がない。「建設工事従事者」を雇用し、受け入れる側の意識改革も合わせて進めたい。

提供:建通新聞社