国土交通省は、市区町村の発注工事で施工時期の平準化を推進する法制度上の検討に入った。平準化で年間の工事量の偏りが解消すれば、入札不調・不落の減少、発注担当職員の事務作業の集中回避など、発注者にとってもメリットが大きいが、こうした理解が市町村内部に浸透しておらず、平準化が進まない要因の一つになっている。債務負担行為や繰越制度の活用、平準化を踏まえた発注計画の作成など、平準化に向けて市区町村が実施すべき事項を明確にし、入札契約適正化法に位置付けることを検討する。
建設業法改正などを審議している中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委委員会を4月16日に開き、出席した有識者らにこうした考えを示した。
公共工事には、年度当初に閑散期、年度末に繁忙期があり、企業は人材・資機材を効率的に配置できず、労働者も収入が不安定で繁忙期に休暇を取得することができない。建設現場の生産性向上や働き方改革のためにも、施工時期の平準化を進める必要がある。
国交省では、直轄工事の年度当初の工事稼働率を高めるため、2カ年国債とゼロ国債を積極的に活用している他、地方整備局単位での発注見通しの統合を地方自治体に呼び掛けている。発注見通しの統合には、1月末時点で全自治体の44%に当たる約870団体が参加している。
また、債務負担行為や繰越制度の活用、積算の前倒しなど、自治体の先進的な取り組みを事例集としてまとめ、各自治体に周知している。
こうした施策により、都道府県では平準化の意識が高まりつつあるが、市区町村の取り組みは依然として遅れている。12日に開かれた政府の経済財政諮問会議でも、安倍晋三首相が下半期に集中する予算執行の平準化を関係省庁に指示しており、国交省は特に市町村に対する施策を強化する。
市町村の中には、財政担当部局に平準化の効果に対する理解がなく、このことが債務負担行為や繰越制度の活用が進まない理由になっているとの指摘もある。現在、品確法では、発注者責務として「計画的な発注」を求めているが、建設業法と入札契約適正化法に平準化に関する明確な規定はない。そこで、法制度上の平準化の位置付けを明確にする。
具体的には、入札契約適正化法などの改正も視野に、各発注者が▽債務負担行為の活用▽繰越制度の活用▽平準化に留意した発注計画の作成▽早期発注に関する方針―などによって平準化を推進することを明確化。平準化の取り組みが遅れている自治体が、法令を根拠に平準化に取り組みやすい環境を整える。
提供:建通新聞社