「身だしなみは大丈夫だろうか。きちんとあいさつができるだろうか。そして社員としてしっかり勤めを果たしていけるだろうか」―。きょう4月2日、そんな不安と緊張、そして新たな生活への期待で胸を一杯にした多くの若者が、新社会人として初めての出社の日を迎える。
一方、彼らを受け入れる企業側も、売り手市場の新卒採用で苦労を経験しているだけに、新入社員に対する期待は大きい。しっかりと会社に定着させ、事業の担い手として育て上げていかなければならない。
しかし新卒者の離職は依然として少なくない。厚生労働省のまとめによると、2014年3月の卒業生の3年以内の離職率は、全業種の平均で大卒者が32・2%、高卒者が40・8%となっている。このうち建設業は、大卒者では30・5%と平均を下回っているが、高卒者は47・7%に上り、平均を6・9㌽上回る。懸案となっている担い手の確保・育成を実現するには、離職防止の取り組みが極めて重要だ。対策のポイントの一つは、若者の仕事と会社への満足度を高めることである。
17年4月の新入社員1623人を対象に、マイナビが入社3カ月後の状況について聞いた意識調査の結果がある。この中で「今の会社に入社して良かったと思ったことがあるか」という質問に対して90・2%が「はい」と答えている。
さらに、「はい」と回答した若者に「それはどんな時か」(複数回答可)を聞いたところ、第1位は「上司・先輩に恵まれたと感じた時」(48・3%)だった。以下、「仕事ならではの経験ができた時」(38・5%)が2位、「給与をもらえた時」(36・1%)が3位、「褒められた時」(35・6)が4位で続く。
この調査結果からは、若者にとっての仕事への満足度は、上司や先輩との良好な関係に大きく依存していることが分かる。さらに、報酬とともに、評価や仕事のやりがいも大切だ。
中小企業においては、経営者の社員への向き合い方も大きい。
長野県にあるフクザワコーポレーション(福澤直樹社長)は17年4月、グループ全体で16人の新卒者を採用したが、これまでに一人も離職していない。3年後の離職率を3・7%という低水準に抑えている。同社では、直用の技能者の育成を含め技術力の向上を徹底して追求、総合評価方式での受注も拡大している。しかし福澤社長は「技術と経営の優位性だけではうまくいかないこともある。社員が幸せでないと会社を辞めてしまうこともある」と指摘する。そして「社員を家族だと思い、行動するようにしてから会社がうまく回るようになってきた」と話す。
若者にとってのこれからの建設業のキーワードは「給料」「休日」、そして「希望」の新3Kだという。「給料」と「休日」については、国土交通省が3月に発表した『建設業働き方改革加速化プログラム』に建設産業界も呼応するなどしており、今後着実に改善が進むことを期待したい。
残る「希望」をどうするか。これを示すことができるのは個々の企業経営者しかいない。今日、新社会人に対して訓示する経営者も多いだろう。ぜひ希望への道筋を語ってほしい。
提供:建通新聞社