国土交通省は、2020年度までに事業費約3700億円を投じて全国の中小河川を整備する「中小河川緊急治水対策プロジェクト」を開始する。九州北部豪雨の被害を教訓に行った緊急点検の結果を踏まえ、全国の都道府県管理の中小河川で、透過型砂防堰堤の整備に約1300億円、河道掘削・堤防整備に約2300億円、危機管理型水位計の設置に約110億円を投じる。初年度分の事業費は、12月下旬にも閣議決定する2017年度補正予算案に計上する方向で検討している。
7月の九州北部豪雨での被害を受け、9〜11月に2万の中小河川を対象に緊急点検を行い、優先箇所を抽出した。17年度から20年度の事業費は約3700億円で、林野庁が実施する治山事業を含めると、総額は約4300億円に上る。まず、17年度補正予算案で防災・安全交付金を追加し、都道府県が実施する対策を予算面で支援する。
九州北部豪雨では、大量の土砂・流木の発生が河川の被害を拡大させており、全国の中小河川で土砂・流木の補足効果の高い透過型砂防堰堤を整備する。過去に土砂・流木の被害を受けた約521河川・745カ所で、透過型砂防堰堤の新設、既設砂防堰堤の改良、流木補足工の新設などの対策を講じる。
越水などでたび重なる浸水被害が発生した中小河川では、再度の氾濫を防止する河道掘削と堤防整備を行う。対象の総延長は438河川の332`。河道掘削と新たな堤防整備で河川の断面を広げて流下能力を向上させ、家屋や重要施設(要配慮者利用施設、市役所など)への浸水被害を防ぐ。
避難の状況判断や河川計画の策定に必要な水位計は、4992河川・5755カ所に設置する。洪水の水位観測に特化した小型・低コストの「危機管理型水位計」を採用することで、従来型の水位計と比べ、1台当たりの設置コストを10分1以下に削減できるという。
国交省は、防災・安全交付金で都道府県事業を支援する一方、都道府県管理河川の下流にある直轄管理区間で河川掘削を行い、治水能力の向上を図る考えだ。
提供:建通新聞社