国土交通省の「今後の発注者のあり方に関する基本問題検討部会」は11月10日、今後の発注行政の方向性を示す中間とりまとめ方針案をまとめた。方針案では、直轄工事の企業評価を見直し、地域の建設企業向けに市場形成すると記載。全国やブロック単位を市場とする「全国・ブロック企業」と地域の守り手≠ニなる「地域企業」ごとに評価指標を設けるとともに、発注標準の工種区分・等級区分も見直すとした。地域企業の市場確保につながる維持修繕などの工種に等級区分を設けることも検討する。
部会は「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」に今年5月に設置された。中間とりまとめ方針案は▽企業評価・技術者評価▽入札契約方式▽監督・検査▽建設生産・管理システム―の各分野で実施する施策を盛り込んでおり、次回12月の会合で各施策の18年度以降の進め方を議論する。
方針案では、地域の建設企業が地域の守り手≠ニしての役割を維持できるよう、地域企業向けの市場を形成する必要性を指摘。現在は一律に行う直轄工事における企業評価(競争参加資格審査、入札時、工事完成時)は、全国・ブロック企業と地域企業などの企業群ごとに行うよう提案した。
その上で、個々の企業が評価手法を選択できる「(仮称)選択マーケット制」を検討することも求め、09年度から適用している資格審査の「残留措置」を代替させる。現在の経営事項審査や工事実績だけでなく、全国・ブロック企業には大規模工事や高い難易度の工事の施工体制、技術開発など、地域企業には災害や維持修繕への対応力を評価項目とすることを検討する。
直轄工事の発注標準における工種区分や等級区分の見直しも検討。地域企業の市場を確保する必要がある「維持修繕」などの工種に等級区分を設け、大量維持更新時代に対応できるようにする。
さらに、地域企業が持続的に技術力を確保できるよう、高い技術力や現場力を持つ企業は、上位等級の工事に参加できるインセンティブを与えることも検討する。維持修繕工事や小規模工事で、あらかじめ地域精通度や災害対応実績などから選定した企業から契約の相手先を選ぶ「フレームワーク方式」を採用できるよう、法的な位置付けも含めて検討する。
方針案にはこの他、脆弱(ぜいじゃく)化が進む地方自治体の発注行政を支援する取り組みも記載。直轄工事の積算システムが多くの発注者で活用できるよう、自治体との標準化・共有化を図る必要性を指摘する。現場条件の不確定要素が多く、当初契約と施工時の数量の乖離(かいり)が大きい工事では、単価契約やコストプラスフィー契約などを積極的に活用できるよう、法的な整理も含めて検討する。
技術者の工事実績を登録するコリンズと業務実績を登録するテクリスを統合運用し、受発注者における工事成績の相互利用を進める。
提供:建通新聞社